その他
□存在定義
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自分が誰かという答えを貰って、どのくらい経っただろうか。
随分経ったはずなのに、未だ仲間に真実を話せずにいる。自分がヒトではなかったという後ろめたさもあるのだろう。
ヒューマでもなく、ガジュマでもなく、そしてハーフでもない自分。
信じていたものが、足元からガラガラと音を立てて崩れていくようだった。
「僕って、何なんだろう…。」
聖獣の目として生まれた自分に、他の役割などあるのだろうか。
今はいい。世界を伝える目としての役割がある。聖獣が存在意義を作ってくれている。
しかし、今の問題が解決すれば存在意義はなくなるだろう。
目ではなくなったオルセルグにどんな価値があるというのか。
「…分からない。僕って、何…?僕は、誰…?」
心の奥が燃えている。温まるような優しい炎ではなく、全てを燃やし尽くすような激しい炎が体中を走り回った。
「ぼ、くは…誰…?」
周辺の木々がマオから迸る炎に焼かれ、灰となって落ちてゆく。
異変に気づいた仲間たちが駆けつけた時には、すでに周りは焼け野原だった。
「何だっ…?!これは…!!」
「マオ!!」
あまりの熱に思わず後ずさるヴェイグたち。焼け野原の中心に小さな仲間を見つけ、ユージーンは叫んだ。
ユージーンの声にマオはゆっくりと顔を上げる。澄んでいたはずの赤い瞳は、暗く濁っており、焦点もあっていなかった。
それを見て、ティトレイがヴェイグを横目で捉えながら口を開く。
「あれは、ヴェイグの時と同じじゃねーか!!」
「力が…暴走しているのか?」
信じられない、とヴェイグは眼前のマオを見た。己よりも余程心が強く、いつも自分を見失わずにいたマオが暴走するなど考えられなかった。
マオという少年に抱いていた先入観が、暴走の前兆を見逃していたのだ。
「マオ!!気をしっかり持て!!」
「…ユージーン…。ねぇ、僕は…誰なの?」
暴走しているはずなのに、マオは苦痛の表情を一切出さず、ただ静かに問いかける。頬に流れる涙は、暴走による熱で一瞬にして蒸発してしまっていた。
迸る炎を身に纏いながら、マオは大声で叫んだ。
「教えてよっ…!!僕は誰なのっ?!!」