その他
□重ねる罪
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イライラする。
このトレミーにいるほとんどの人間が、自分ではなく、兄を見ていることに。
酷く腹が立った。まるで、自分は彼の代用品に過ぎないのだと、面と向かって言われているようで。
事実、彼の抜けた穴を補うために加入したけれど。
それとこれとは話が別だった。
「…わからせて、やったんだ。」
フラレタ、フラレタ、と些か不名誉な言葉を放つハロを横目に、ライルは小さく呟いた。
思い出す、あの少女の眼差しを。
ロックオンと、戸惑いがちに呼ぶ声を。
自分ではなく、兄を見ているあの少女を。
「比べられちゃたまんねぇからな…。」
あのフェルトという少女は兄が好きだったのだろう。
判り易いほどに、フェルトにとっては侮辱であるだろう言葉に、反応した。
ジンジンと痛む頬にライルは苦笑する。
デュナメスのボディに映る顔が、このトレミーの人間には兄に見えるのだろう。
ライルには全くの別人に見えるのに。
これほどまでに双子は他人を撹乱させるものなのか。
日常の些細な間違いだけではなく、人の心理状態まで左右するほどに。
「…でも、それだけ兄さんは…。」
大切な存在だったんだろう。
失った片割れは、こんな世界で確かな居場所があったんだ。
(最初から俺がいれたら、こんな気持ちを抱くこともなかっただろに)