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□届きそうで届かない
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君は、

まるで 風の 様にすり抜けて…








久しぶりにまた地球へやってきた。
チクショー、もう夕方じゃん。宇宙との時間差を把握しておくべきだったなぁ。あ、でも暫くはココにいるつもりだし。いっか1日くらい無駄に過ごしても。

なんて考えながら傘をさし、宇宙船から降りる。


「神楽、元気にしてるかな」




前回ココにきたとき、俺の妹神楽に会った。妹は昔と変わっていて、見た目はそのままなのに、いつの間にかその心は強く逞しくなっていた。

自分の血と戦う覚悟を目に宿らせて、綺麗な瞳だった。


だから俺はしばらくの間、目をそらせなかった、見とれていたんだ。

自分にないもの、否、自分が諦めたものを神楽はもっていた。


そこに俺は自分の妹なのに惚れてしまったのだ。



さて、あれから数ヶ月しかたっていないけれど神楽は元気にしているのかな?

見に行ってみよう…。





****



夕焼けも半分にまで沈みかけた頃、俺は歌舞伎町についた。



「たしか、このあたりだったような」



屋根の上から神楽を探す。前に遊女から聞いた情報だから宛にならないかもしれないけれど、でも俺はわずかな可能性にかけて
探していた。



そのときだった。


少し遠くの空き地に座っている赤い服をきた女の子をみつけた。


「間違いない、神楽だ」



傘もさしている、ああ、こんなにも早く見つかるなんて。
見つけただけで心がこんなにも踊るなんて。

俺ってば、神楽依存症なのかな
なんか 悪性の強そうな病気の名前みたいだ。

そんなことよりも早く会いにいこう。
今度は妹を想う兄貴として、
いいや、神楽を想う男として。



「ん?」



神楽の元にかけだそうとしたとき、もう一人神楽の隣にいるのが分かった。



ここからでも分かる。
あれは男、しかも仲良さげに話している。



「だれだよ、あいつ」



本当なら今すぐその男を殺して神楽の前に立ちたい。だけど、そんなことをしたら神楽は悲しむんじゃないかな…



「ってアレ?これじゃああの男と神楽ができてるみたいじゃない」



ははっ、まさか。
あんな栗色ヘアーの男と神楽ができてるわけない。

ただ友達を失うから悲しむってだけだよ。

だから俺は殺さない、それだけ。


「自己暗示自己暗示」



そう呟いて自分に落ち着けと、自己暗示をかける。

大丈夫、神楽もきっと俺を受け入れてくれる。あんな男より俺を。




じゃあなんで、キスシテイルノ?



「神楽!」


「か、むい!?」


俺はさっきみた光景に居たたまれなく神楽に駆け寄った。そりゃあもう勢いよく。



「誰でさァ、こいつ。…傘さしてるって事は夜兎ですかィ?」



「神楽、だれこの男」



「コイツは…沖田は私の恋人アルヨ」



聞きたくない言葉が俺の耳に入ってきた。



「沖田、コイツは神威っていうアル。私の兄貴ネ」



「ふぅん。どおりで、神楽の面影があるわけだ」



初めまして、と言う沖田って男を俺は無視して神楽に問いかけた。


「恋人ってなに?俺きいてないよ」



「言う義理なんてないネ。」



「恋人ができたら兄貴に言うって法律あるじゃない」


「いや、ねーヨ」



「兎に角、なんで恋人つくったの?神楽は本当にこいつが好きなの?」



「もちろんアル。好きじゃなかったらキスなんてしないネ」



ヤッパリキスしてたんだ。見間違いじゃなかった。


「キスなんて、俺ともしたじゃない」



「ガキの頃の話アルヨ、神威にはなんの感情もないネ」



「…………」



「ただ兄貴ってだけアル」



「…でも少しは好意とかあるでしょ?」



「好意?んなもん沖田にしかないヨ。あるとしたら恨みだけネ」



「神楽、いいすぎじゃねーかィ?」



「沖田は黙ってるヨロシ。私はコイツが気にくわないアル、自分の血から逃げて戦わないバカ兄貴が」



戦わないバカ兄貴、か。
それが神楽が俺に向ける感情?ククッ

笑える、俺は戦うバカ妹に惚れていたのに神楽は戦わないバカ兄貴を嫌っていたんだ。



今も。



「そう、神楽は俺を恨んでるんだ」



「…そうネ」



「じゃあいつか、俺が自分と戦うバカ兄貴になったら。神楽は…君は俺を受け入れてくれる?」



神楽は 意味がわからないといった顔をしたが


「その時しだいネ」


と答えた。


「そう。わかった、じゃあ俺帰るネ」


「……………」



「神楽、元気そうでなによりだよ。またね」



「………」



「それから沖田、とかいったっけ。俺は君を恨むよ」



「…!」



そう言って俺は2人にクルリと背をむけて大嫌いな日に向かって歩いた。


あんなに近くで話したのに…


あんなに近くに君はいたのに…







届きそうで届かない





(いずれまた、俺は強くナッて君を奪いにいくから)

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