†贄の翼†
□†贄の翼†堕天使の降る谷〜素顔の陰にあるモノ〜
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素顔の陰にあるモノ
人と『贄』との狭間に、いったいどんな違いがあるかって?
そんなこと、俺にわかる訳が無い。
わかってなどやるものか。
俺は自分が『贄』だなんて思っていないから。
自分が卑しきものだなんて、認めていないから。
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瑞杞と龍王が朝から船を空けて買い物に出ているあいだ、船の中のクルーたちは、龍王の誕生日のために、いつもとはまた違う忙しさに追われていた。
手作りの人形を象った蝋燭や光輝く絹の布など、ありとあらゆる装飾を食堂に飾りつけ、床の隅には大量の酒やウイスキービンを並べ、そして極めつけは、直径が二メートルもある特大誕生日ケーキを部屋の中心に設置するのだ。
特大ケーキ班は、それこそ一番人数が多い。
生クリームとチョコクリーム、大量のラム酒入りのクリームなど、何種類もの味を作り分けなければならない。
これを合わせていき、縦の厚さ30cmの巨大なケーキにするのだから、作る量は何層にもなる。
さらに、ケーキの上にのせるデコレーションや、花の形をしたフルーツなんかを作ったりもする。
一日でこれをするとなると、朝から手分けをして取り掛からないと、晩までに準備が終わらないのだ。
しかし、これら全てが龍王の要求ではない。
皆が、龍王を祝ってあげたいという一心でこれだけデカいスケールにしてしまうのだ。
実際、どうせ大きくするならとことんやってやろうじゃないかという、ど根性も混ざっていたりする。
そして今年の龍王のためのパーティーで、急遽であるが、新しい班が立ち上げられた。
それは、衣装班である。突如転がり込んできた赤毛の少年を飾り上げて、龍王を喜ばせてあげようという、全く新しく作った企画だった。
200人もいるクルーたちの中には、一度見ただけで相手の強さ、パワー、鎧の中の体格を見抜いてしまうという、凄腕の男たちが数人いたものだから、興味の尽きないイタズラ心から膨らんで、こうなってしまったのだという。
しかし、これは昨日突然決まった事で、もちろん班員以外にこの奇怪な企てを知る者はない。
龍王も瑞杞も、碧でさえ全く知らないのだ。
果たしてこのおかしな企画が、龍王をどのように喜ばせるのだろうか。
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