†贄の翼†
□†起源†
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世界がうまれて100年がすぎた頃、まだそれは存在を赦されたばかりの、ほんの赤子だった。
誰にも知られることなく、世界の陰でひっそりと息をしていた。
世界は穏やかに時をつなぎ、やがて世界の中心に七色の鮮やかな大樹が生まれた。
そこは赤子がいた場所からそう遠くはなく、大樹がすくすくと育ってゆくのがはっきりと見えた。
それを見た赤子は羨ましさに、大樹の真似を始めた。
胴をのばし手足を誇らしげに広げてみた。
だが、それは上手くいかなかった。
大樹の柔らかな葉が風に吹かれると、あたりはピンク色の花畑に変わり、いつの間にか大樹の周りはピクシー達の溜まり場となった。
赤子はその光景じっと見ていた。
そして、仲間という存在にあこがれを抱いた。
大樹が、やはり羨ましかったのだ。
赤子は身体中から力という力をかき集め、とうとう小さな手から種を作り出した。
赤子はにっこりと口を綻ばせ、その日から地面に埋めた種を見守ることに決めた。
雨の日も風の日も、嵐の日にも大干ばつの日にも…
種がいつ芽を出しても大丈夫なように赤子は見守り続けた。
そしてまた100年がすぎた頃。
大樹のまわりで群れていたピクシー達が、やがていろんな仲間を呼んできた。
しばらくすると、そこは草や土で作られた家で、徐々に埋まっていった。
赤子は相変わらず種の世話を焼いていたが、初めてみる生き物たちに心躍らせた。
とうとう我慢できなくなって、
『ちよっとだけ』
と自分に言い聞かせて、種の埋めてある場所を離れた。
大樹の麓に近づくと、ピクシーが連れてきたヘンテコな生き物が赤子に向かって声をかけてきた。
『おまえは誰だ?一体ここに何をしにきたんだ?』
『僕のことかい?僕はここに友達を作りに来たんだよ』
初めて他の誰かと会話できることの嬉しさに、体全体であらん限りの大げさな挨拶をした。
『今まで僕の周りには誰もいなかったから、君たちを僕の友達の第一号にしようと思うんだけど、どうかな?』
赤子は思い切って右手を差し出した。
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