言の葉

□涙のテーマ
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「‥ニコル」

呟くように名前を呼んだ。

「‥‥‥」

けれどいつものようにすぐの返事はなかった

「‥戦闘が終わる度に、この曲‥弾いてるんです‥」

「沢山の人が死んでしまうから‥
僕たちの仲間も、あの人達の仲間も」

「‥‥‥‥。」

「‥ミゲルの為に弾くのは御免だって、
嫌だって‥言ったのに‥」


泣いている   気がした。


ニコルはいつも人のことばかり気にする
腰抜けだとさけずんでいたから


「バカですよねぇ。あの人‥」


だけど涙をこぼしてはいなかった。
ただ 愛しげに笑いながらメロディを奏でていた

「泣かないのか?腰抜けの癖に」

「泣いたって帰ってきませんよ」

「ミゲルが泣くぞ」

「‥泣いてませんよ。
あの人、イザークと違って音楽肌ですから この曲聞いたら笑ってますよ‥」

いつもの部屋 いつものピアノにいつものメロディ 違うのは     ミゲルが居ないこと

「‥多分‥」


この曲は死者への撓むけの曲。


指を動かし続けるニコルの首に腕を絡めた。

「‥俺は お前より先に死なない」

「‥イザーク?」

呟くと 指が止まって部屋には沈黙しかなくなった。

「だから お前が俺の為に弾く曲はない。」

「‥‥ふふ、酷いなぁ‥僕ピアニストなのに‥」

「‥‥‥‥」

「‥イザークが、死ぬなんて有り得ませんよ」

「お前は‥弱いから死ぬな」

「失礼ですね〜!大丈夫ですよ!
天国から自分のために弾きます。
それに‥その時はアスランが守ってくれますから、僕は死にません」

ミゲルは いつも後ろでニコルを支えていた。

見守るようにアスランは いつも隣にいる。

それが今は当たり前で



俺は今ニコルの何処にいる‥―?



「なら、お前が死んだら俺が仇を取ってやるよ 
未来の隊長としてな」

「‥‥イザークは優しいから‥
僕を殺した人を殺すなんてできないですよ‥」

「何だと貴様っ!!」

困ったように微笑むニコルにカッとなって怒ると
いつものしたり顔で微笑まれた





「‥ありがとう。イザーク」







その言葉に意味が持つのに 時間はそんなにかからなかった。




予感は あった。

アスランがストライク奪還に失敗した時から。


前から嫌いだった。
ただ、あの時からそれは不安にも変わった。
もしあのストライクが敵になったら こいつはストライクを殺せない。
そしてきっと ニコルはアスランの為に命を懸けるのだと




―― あいつは人が死ぬのは嫌だから。





『泣いたって帰ってきませんよ。』




ニコルはそう言ったけど  ただ“居ない”と言うことに  単純に涙が溢れた。














end.
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