言の葉

□Private teach−Naoya Version−
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***



「アンタの話、殆ど聞いた事ないんだけど。」

たっちゃんは家について無造作にイスに上着を投げ捨てた。

「‥たっちゃん聞かなかったじゃん。何怒ってんの?」

「‥怒ってない。」

ついさっきまでは奥歯噛みしめて笑ったりしていたのに
今の態度は180度打って変わって誰から見ても不機嫌だった。

「嘘。怒ってるよ。」

とにかく何故不機嫌なのか理由がわからない。
少しでも怒りを解そうと眉間をグリグリと圧す。

「克哉さんと居るときみたいに眉間に皺が寄ってる」

克哉さんの名前を出したのがいけなかったのか
たっちゃんは無視を決め込んだようだ。

「‥‥‥‥」

不機嫌に眉間に皺寄せて俺を見おろす形は
どちらかと言えば身長の低い俺にとっては
メギドラオンを喰らわしてやりたいくらいムカつく気分だ。
たっちゃんの視線が俺の首筋を泳いでいる。

「尚也‥さん、首 何か赤くなってる‥」

「‥‥‥///!!」

確かめるように触れて少し考えた後
すぐにたっちゃんの手を払って跡を隠した。
たっちゃんと逢う少し前に付けられたまだ新しい跡、


‥自分が上杉のモノだという印



「‥キスマーク?」

「‥‥‥」

「尚也さん恋人居るんだ。」

たっちゃんはご丁寧にもしつこく追求してくる。

「‥この年で一人も居ない方がおかしいだろ」

「まさかとは思うけど結婚してるのか?」

ちらりと左手を確認した後不安げに聞いてくる。

「半同棲‥かな。」


顔が熱い。



そういえば 上杉を“恋人”だと自分で肯定したのは初めてかもしれない。

「どんな奴?」

「‥たっちゃんに教える義務はない。」

「何だ。結局聞いても教えてくれないんだ。」

「!‥高校の頃の同級生だよ。今はテレビとかでてる」

一瞬、冷めたように言われてバカにされた気がして
ムキになってベラベラと昔話をしてしまう。
答えてもたっちゃんの不機嫌は直らないらしく‥

「ーーまったく、
上杉のせいで言わなくて良いことまで言わないといけなくなっ‥」

途中で気が付いて唇を噤んだ。

「『上杉』、ってお笑いタレントのブラウンか?」

止めたときには時すでに遅かった。

「たっちゃんってテレビ見ないんじゃなかった?」

「栄吉が前話してた」

「そっか‥。」


納得。


「そいつ‥男だろ。尚也さん男と付き合ってるのか?」

上杉は男。

「‥うん。」


性別なんて関係ない。


ただ、俺は上杉が居ればそれで良い。

俺は首に付いたキスマークが愛しくて‥
ソレを確かめるように撫でた。

首筋に生ぬるい感触が走る

「っ‥たっ‥ちゃん!?」

たっちゃんはそのキスマークに自分の唇をあてて‥
触れるだけじゃなくて舌を這わせた。

「やぁ‥ダメ‥っ」

急な快感にぴくりと反応する俺の身体は
たっちゃんの体重でベッドに倒れた。
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