言の葉

□生きて
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言うと ビクトールが口を紡いだ。

「あいつ、ソニエールで一度も泣かなかったからな。
今は‥時期じゃない。」

「時期?あいつの事忘れるまで渡さない気?」

「そうじゃねえよ。
辛いだろうが今はリーダーの勤めを果たして貰わなきゃならねぇからさ。
‥頼んだぜ!」

ポン!と頭を小突いて自室へと向かう。

(わけわかんない。嫌な役ばっか僕に押しつけて‥)

もっともマクドールに嫌われてる僕が行っても
気分を害するだけだと思うけど。

マクドールの部屋は天辺の右端、
長い通路を進んだ先だった。

「‥っ‥」

扉の向こうから小さく呻くような声が聞こえる。

「マクドール?」



呼びかけると驚いたようにマクドールが振り向く。

「‥ルッ‥ク、」

その顔は酷く歪んでいた。

「‥今、不細工な顔になってるけど?」

「え‥?」

気付いてなかったかのようにマクドールは顔の輪郭を確かめる。

「残念だったね。
あんな男殺した方が良かったんじゃないの?」

軽くあしらうと冷めたような顔で呟いた。

「‥そんな事しても彼は喜ばないよ‥」

偽善的な発言にイラつく

「へえ?それで何をした奴でも許せるんだ!?
その程度の思いだったなら暗い顔するの止めたら?
泣きもしない癖に!」

言った後後悔する。

「‥ごめん。ビクトールがマッシュの処にって‥」

「許せるわけ‥ない。」

「マクドール?」

「あいつ‥僕の命令無視して、
最初で最後のお願いとか言って勝手に死んだんだ。
僕を残して死んだグレミオも、グレミオを殺したミレイヒも!
グレミオに命を使わせた僕も!!許せるわけないじゃないか!
マクドールが僕の服の裾をきつく掴む。

「僕が‥死んだ方が良かったんだ。
グレミオは死ぬべき人じゃない!
それなのに‥僕だけがのうのうと無傷で生きてるなんて‥っ」

「マクドール‥」

「許せるわけ、ない。許せない。許さない‥っ!!

身体が無意識にマクドールの身体を抱きしめる。

「‥泣けば楽になるんじゃない?」

「‥泣けないんだ‥涙が出ない‥。
グレミオの前で泣いたら
グレミオが死んでも死にきれない‥それに僕は、リーダーだから‥っ」

「他に誰もいないよ」

「‥ルックがいる‥」

「‥見てないよ」

「―――っ」

力強い腕に服を皺だらけにさせられてしまう。

「ぅ‥っ、くっ‥」

悲鳴みたいな嗚咽。

これ以上強く抱きしめたら壊れてしまいそうな
細く小さな身体。

壊したくないのに 離したくなくて強く抱きしめてしまう。

「ひっ‥く、っ‥ぅ‥何で・・?」
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