言の葉
□グレミオ
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僕は彼の違う処を探す
「坊ちゃん、もうすぐシチューできますからね。」
グツグツという音とシチューの旨そうな匂いが部屋中に充満している。
グレミオは柔らかな笑みでシチューを煮ていた。
「こうやってじっくりと煮込むともっと美味しくなるんですよ」
一度居なくなった彼はまたシチューを作ることに
喜びを感じているようだった。
グレミオはグレミオだけど違うグレミオで、監獄まで共にした彼とはまた違う、
それでも同じ形で同じように笑うグレミオ‥
自分には 何百年という時間が与えられた。
なら再び甦った彼はどのくらい生きられるのだろうか
昔、約束したように僕が死ぬときまで一緒にいるのだろうか?
それとも 前に味わった悲しみを‥
グレミオの最期を看取らなければいけないだろうか‥?
―僕は彼の違う処を探す―
「「っわぁ!なっ、どうしたんですか坊ちゃんっ!!??///」」
「なんとなくだ‥」
後ろから抱きつくとグレミオの身体がびくん、と
大きく揺れる。
「‥ふふ、坊ちゃんももう大人なんですから、
こしょばしたりはしないで下さいね?」
クスクスと笑ってグレミオは懐かしそうに‥
愛しいげに僕の頭を子供にするみたいに撫でる。
‥‥‥年を取らないこと、
変わらないこと、
置いて行かれること、…生き続けること…
長い長い時の中でテッドはどれだけの喜びと悲しみを
感じたのだろう
それでも
「‥早く、シチュー、食べたいな‥。」
「まったく‥坊ちゃんはいつまで経っても子供なんですから‥」
そうやって僕の頭を撫でている手は
今でも僕を守ってくれているから
同じように笑ってくれるから‥
たとえどんな出会いをしても どんな別れをしても
僕は何度も笑ったり涙を流せる
――きっと‥
end.