言の葉

□生きて
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それはどれくらい時間が経ってからだろう?
ソニエールの監獄までリュウカンを助けに行ったきり
戻ってこないマクドール達をマッシュが迎えに行って帰ってきた時間は。
皆の顔は暗く青ざめていて、
マクドールにはいつもの余裕がないようだった。
そして その隣にはいつも見かける男の姿がなかった。

風の噂が耳に入る。

死んだ。

というより消滅、という方が正しいだろう。

遺体はなく、その男の遺品がなければ
存在すらないかのような光景だったらしい。
一番側にいたマクドールがおかしくなっても
仕方がないだろう。

「スカーレシィアに突入しよう」

なのに マクドールは冷ややかに言ってのけた。
それは “復讐”なのだとすぐに悟る。
軍の皆も依存はなかった。
あの男が死ぬなんてあってはならない事だったからだ。
軍を率いて城に攻め込む。
その激しい憎しみに敵将ミレイヒは勝てるはずもなく朽ちた。
「ティオ様、
あなたがお決めください。‥生かすか殺すか。」

決断。



大事な命を奪われて許せるほどマクドールは大人じゃない。
例えミレイヒが操られていたのだとしても殺したいと言うほどの
すさまじい憎悪がミレイヒに向くのは
まだ子供なのだから仕方がない事だった。

それなのに


「ティオ、さん‥」

キルキスが聞こえないような小さな声で名前を呼ぶ。
マクドールの怒りに震えていた手が梱をきつく握り絞めた。

そして

「‥彼は、殺さない」

決断を下す。

「「バカ野郎!こいつのせいであいつは‥!!」」

「「そうだ!こんなやつ!!」」

当然の如くビクトール達はミレイヒの首を落とそうとする。

「‥‥‥殺さ‥ない。」

それでもマクドールは苦しそうに頑なに拒否する。

「お前が一番辛いはずだろ‥!?」

「やめようビクトール。
ティオ様が言うのだからそれが一番良いのでしょう‥」

クレオが止めに入る

「‥ミレイヒ将軍、僕らの仲間となってくれますね?」

「――ティオ様の仰せのままに‥」

マクドールは解放軍リーダーにふさわしい勝利を手にした。

「なぁ ティオ知らねぇか」

「‥部屋じゃないの?」

ビクトールが話しかけてくる

「そうか、じゃあ‥‥ルック、頼んで良いか?
マクドールに後でマッシュの処に来るように言いに行ってくれねぇ?」

「何で僕が行かなきゃならないのさ」

「いや、ちょっとな。
今逢うとコレ渡しちまいそうでな」

“コレ”、と称された物を見て納得する。


彼の遺品だ。


「渡した方が良いんじゃないの?」
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