Mi

□再 another story U
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ピピピ、ピピピ…


何度聞いても不快な電子音


(あさ、か…)


開かない瞼で唸りながら手探りで携帯を探す。

ディスプレイにはメール一件の通知が。


『やほー♪正チャン起きてる?今日は僕ン家に泊まりなよ』


昨日ヤったばかりのくせにあの精力魔神。
眠りを遮られた怒りに悪態をつきながらもわかりました、と文字をぽちぽち打ち始める。

珍しいことでは無かった。

スパナがいない時は寂しさを誤魔化してくれたし。
それに行かないと次ヤる時のこの人の仕打ちといったら


「行くのか?」

「!!」


(そうだった…)


冷水を頭からぶっかけられたように脳がいきなり活性化。

夢では、無い。

昨日は偶然に奇跡が重なって想い人スパナと布団を共にした。

実際こっちは緊張して中々寝れたものでは無かったが(スパナは熟睡していた。人の気も知らないで)


「?」


当の本人は目を擦りながら眠そうな顔でどうやって言い訳しようと慌てる自分を見つめる。


また、いつもの、顔


(別に言い訳する間柄でも無いのに)


「う、…ん」

「やっぱり正一はアイツが好きなんだな」


ブチン


キレるのは早かった。

寝起きだったからかもしれない。自分は根っからの低血圧だ。


「僕の気持ちも知らないくせに適当なこと言うなよ!」


喚く。泣く。逆切れする。

(白蘭さんの言う通りだな…)

潮時なのかもしれない。

憐れなマリオネットに終止符を。


しかし急に叫んだ正一にスパナは顔色一つ変えなかった。


「知らない。だって聞いてないから」

「……僕は、…ッ…お前が好きなんだ。昔から」


言ってしまった。


驚いた、とスパナの瞳の表面積が広がる。


「ごめん、気持ち悪いよな。だから放って置いて……」

「そっか。これで言える」


スパナは新しい発見をしたみたいな純粋極まり無い笑みを浮かべた。


「アイツのところなんかに行くなよ」







「ウチのいないところでアイツに会うな」


そう言って抱きしめられた身体は嘘みたいにあったかくて。


涙が溢れて


幸せなのに


あの人のイヤに冷たい肌が思い出されて胸がぎう、と締め付けられた。








*
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