幸村は一人自室にいた。 部屋の中心に座り、ゆっくりと腕に出来てた傷口を触っている。 ザラザラとした感触に顔を歪めた。 痛みはないのだが、痛い。 脳裏にこの傷から始まった行為を思い出す。 瞬時に顔を赤くした。 次々と甦る情事に身体が疼きだす。 疼きへと手を伸ばし触れながら、とまどいは隠せないでいた。 「私にどんな施しをなさったのですか。」 兼続殿、と目を瞑り指に力を入れた。 |
「…っん。」 部屋に幸村の小さな声と荒い息遣いが響く。 慣れない行為にどうしていいかわからず、兼続がしてくれたのを思い出しながら熱を吐き出そうとした。 自分は何をしているんだと、冷静に考えつつも、この行為を止めることはしない。 ゆっくりと上下に動かす手付きがたどたどしい。 自分の手を兼続の手と重ねながら没頭した。 カタン、と音が背後から聞こえた。 勢い良くその音の方へ振り返り確かめる。 「三成、殿。」 名前を呼んだ通り、襖に手を掛け幸村をじぃっと見つめる三成の姿があった。 直ぐ様、幸村は触っていた手を引き、隠すように足を閉じた。 見られたかもしれない、と恥ずかしさから顔を赤くする。 しかし三成の立っている姿にゾクリと背筋が凍る思いをした。 冷や汗がツゥと流れる。 三成は襖を音を立てずに閉め、何も言わず幸村の前に座った。 そして幸村の手首を掴み袖を捲り上げる。 目に入るのは痂。 それを見た三成は、ほぅ、と小さく声をあげた。 「俺の知っている傷ではないな。」 一体どうやって付けたのだろうな、と三成はその傷に顔を近付け舐めた。 ビクン、と幸村は反応し腕を引こうとするが三成の方が力が強いのか、それは適わない。 何をするのです、と問えば、早く治るようにしてやっている、と赤い舌を覗かせた。 このままではこの前の二の舞ではないか、どうにかして止めさせなければ、と思っていた時三成の手が幸村の下半身へと触れる。 今まで以上に大きく体が反応した。 「腕を舐めただけで幸村はこうなるのか?」 「ち、違っ!」 「あぁ、違う。俺が来る前からこう大きくなっていたな。」 まさかお前が自慰をしているとは思わなかった、と耳に囁けば一気に幸村の体は熱を帯びた。 羞恥心で目に涙が溜まる。 フッ、と三成は笑いそのままやんわりと下から上へと何回もなぞった。 「お、やめっ…ください。」 「止めればお前が辛いままだ。」 「っあ…それでも…っ。」 「お前がよくても、俺がよくない。」 そして三成は幸村の口を塞いだ。 ふぅ、とくぐもった声に、出し入れする舌を懸命に絡ませる。 その間も三成の手は止まらない。 やっと離された唇からは細い糸が引いていた。 どさり、と床へ押し倒し覆い被さる。 同時に腰紐を解く。 露になった幸村の体に三成は唾を飲み込み、再び口を塞いだ。 「ぅん…っふ。」 「綺麗だ、幸村」 片手で幸村の顔を三成と合うように向ける。 もう片方の手は胸へとあった。 何度と口付けを交わし、幾度と胸の突起物へ刺激を与える。 幸村の体はそれらに合わさるようにビクビクと動き、自然と目からは涙が一つ流れた。 その涙を舌で掬い、耳たぶを軽く噛む。 一際大きく幸村は跳ねた。 「なんだ、ここが弱いのか。」 「知りま…ぁあ!」 「フッ、体は正直だ。」 すっ、と顔の輪郭をなぞるように指を這わす。 顎から喉、鎖骨、胸へと順を追って手を滑らせた。 幸村の反応を楽しむように上から眺め、途中何かを確かめるように指を止めては、そこをトントンと叩く。 「お前は気付いてないのだろう?」 「何を…です、か?」 乱れている息を整えようと肩を揺らす。 三成の顔が落ちてきた、と思ったらチクリと小さな痛みが生じた。 「ここと、ここ。あぁ、こっちにもあいつは付けていたな。」 至る所に三成は口付けをしその度に痛みが走った。 見てみろ、と力の入らない幸村の腕を引き体を起こす。 幸村の目に入ったのは赤々とした至る所にある跡だった。 「こ、れは…?」 「お前が俺のモノだという印だ。」 肩を押し幸村は再び三成を見上げる形になる。 その三成の顔は艶めかしく笑っていた。 「兼続が浸けていたのにも気付いてないのだろう?」 「な…ぜ?」 「俺が知らないとでも思っていたか?」 幸村の前髪を掻き分け深く口付ける。 口の端からどちらのかわからない涎が零れ、それを指で掬い幸村の口へと入れた。 舐めろ、と言われたとおりに幸村はしゃぶる。 一生懸命なその姿に三成は口の端をあげた。 「あんな場所でするなんて…淫乱だな、幸村。」 「もしかし…っうん、ん。」 「あぁ、お前は襲われたのだったな。」 それでも凄く乱れていたな、と今度は指を引き抜いた。 指と口には糸が引く。 幸村は、三成に見られていた、と泣き出しそうな顔を腕で隠した。 しかし直ぐにその腕は解かれ幸村の顔は苦痛で歪みだす。 ぅっ、と小さく声を洩らした。 「あっ、いっ……ふぁ。」 「初めてではないのだ、何をするのかはわかろう。」 「ぁあ……っみつな…り…っ。」 幸村の声と共に中を掻き乱す指の数を増やす。 ぐちゅり、という音が部屋に響き二人を煽った。 指の動きに合わせ幸村の腰も自然と動く。 本当に幸村は淫乱だ、と三成は笑い指を抜いた。 変わりに三成自身を宛行う。 慣らされたそこにずぶずぶとすんなりと入っていく。 指とは比べものにならない太さと質量、それに熱。 嬌声をあげながら、全てを飲み込むとゆっくりと律動を開始した。 「はぁ…ぁっ、あぁっ。」 結合部からの卑猥な音と衣服の擦れる音、それと幸村の鳴き声と三成の乱れた息遣いが部屋に充満する。 次第に早くなる動きに限界が近づく。 「っあ、み…つなり…どのっ、はぁっ……もうっ!」 「あぁ。俺もっ、限界だ。」 打ち付ける力も強くなっていく。 三成はもう何度目になるかわからない口付けを贈った。 「はっ…ぅん……っあ…み、つなっ」 「幸村っ、好きだ。愛してるっ!」 「あぁっっ!」 その瞬間、二人は同時に果てた。 幸村の体を濡れた布で拭く。 そして乱れた衣服を整え、用意された布団へと運んだ。 三成はそれを少し離れた所から見ていた。 「どうだ、好きな奴が他人にやられている所を見るのは?」 「あぁ、実に腹立たしいな。」 「少しは俺の気持ちがわかったか。」 「残念なことにな。」 横になり幸村の傍まで三成は近寄る。 疲れたのか、ぐっすり眠っている姿に安心をした。 「次に幸村に手を出してみろ。お前の首を俺が落としてやる、兼続。」 「逆に三成が幸村に手を出したら、私が首をいただく。」 物騒な会話をしつつも二人の視線は柔らかく幸村へと向けられている。 兼続は幸村の前髪を掻き分け額へと口付けをした。 反対側へと移動した三成も同様に唇を落とす。 うぅん、と幸村は小さく身動いだ。 「なぁ、三成。」 「なんだ?」 「幸村の気持ちがはっきりするまで、私達で存分に愛してやるのはどうだろうか?」 「他の誰かに靡いたら?」 「その時は決まっていよう。」 「相手の首を刎ねるまでだ。」 兼続は悪戯をするかのように幸村の顔を撫で、三成は遊ぶかのように髪を梳いていた。 幸村を愛していいのは私達だけだ。 幸村が愛していいのは俺達だけだ。 愛したい、愛されたい、そして愛したい。 この想いが今後どうなっていくのか、寝ている幸村は知る由もなかった。 |
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