戦国

□うららか天気
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どうしたものか、と机の上で頭を伏せている三成を見下ろしながら幸村は一人佇んでいた。



























天気のよい午後の昼下がり、手には四角い箱を持ち目的の部屋へと幸村は廊下を歩いて行った。
箱の中身はちょっと三成には甘すぎるかもしれない饅頭が入っている。
幸村が一口食べて気に入ったもので、是非三成にも食べてもらおう、と用意したものだった。
三成も気に入るか少し不安になり、逆にその反応がちょっと楽しみだったりする。
ふふっ、と想像してみればその人物がいるだろう部屋へと辿り着いた。


「三成殿、幸村にございます」


戸の前で片膝をつき声がするのを待つ。
だが暫らく待っても声どころか反応すらない。
三成殿、ともう一度名を呼んでみたが同じだった。
もしかしたらいないのかもしれない、と考えたがその考えはもっと悪いほうへと転がった。
部屋の中で倒れているのではないか、そんなことが頭を過る。
そう思ったらいてもたってもいられなくなり、ばんっと大きな音を立てながら戸を勢い良く開けた。


「三成殿、大丈夫で…す……か?」


入って部屋を見渡せば頭にあったような絵柄はなかった。
あったのは机に顔を伏せている三成の姿。
恐る恐る近づいてみる。
なんとも気持ち良さそうに三成は寝ていた。


「寝て…いらっしゃるのですか?」


起こさないようにと小さな声で、音を立てないようにとそろりと歩く。
髪の毛が揺らいでいると思いその原因なるものを探せば戸が少しばかり開いていた。
そこからそよそよと優しい風と暖かな日差しが入り込んでいる。
これでは寝てしまうのも無理はない。
三成でもこういう事があるのだな、と驚きながらもなんだか可愛く思え顔が綻んだ。


「しかし整った顔をしていらっしゃる…」


顔が同じ高さになるように三成の横へしゃがんだ幸村は、その顔をまじまじと覗く。


「長い睫毛…」


三成の鋭い瞳は閉じられていて、睫毛からは影が落ちている。
だけど少しだけ開いている口を目にすると、幸村よりも年上なのだが幼く見えおかしく思えた。
優しい気持ちになれる。
こんな三成を見ていたら自分の心が暖かくなって、ふわふわと浮いてしまうような、そんな感じになる。
これも三成のことが好きな為だろうと、幸村は最近になって気付いた。
名前を呼ばれただけでどきどきと胸が早鐘するのも、目が合っただけで顔全体に熱が集まるのも。
全ては三成に恋をしているからだ、と。
外へ出ていないため日に焼けてない白い肌へそっと手を伸ばす。
じんわりと指先から暖かなぬくもりを感じた。
今度は少し顔へ掛かっている茶色の髪へ手を伸ばし、それを掻き上げる。
隠れていた顔と耳が覗いた。


「三成殿」


なんとなく呼んでみた名前。
いや声に出す気は無かったのに、小さく小さく口から零れていた。
無意識かもしれない、意図的にかもしれない。
幸村自身それはわからないが、三成の耳元に自分の唇を寄せた。


「三成殿のこと、お慕いしております」


細めていた目を開けながら顔を離す。
視野一杯に三成の寝顔が映った。
途端、恥ずかしくなりがばっと勢い良く体も離す。
あぁどうしよう、と幸村は真っ赤に顔を染めていた。
誰かに見られたり聞かれたりしていないだろうか、と辺りをきょろきょろ見回す。
相当気が動転していたのかさっきからそこにいた三成の姿を見てびっくりしてしまった。
危うく声を上げそうになって、咄嗟に口を両手で覆う。
その状態のまま一回、二回と息を吸い込み、三回目にゆっくりと長く大きく肩を上下させた。
手を離して、小さく深呼吸。
まだ心臓はどくどくと鳴っている。
だが幾分冷静になってきて、自分は何をしているんだ、と頭を抱えた。
そこで今日ここに来た目的を思い出す。
近くに置いていた箱を手に取り机の空いている所へ置き直した。
音を立てないように動き、部屋を出るため戸を開ける。
お休みなさいませ、と最後に寝ている三成を見つめ、部屋を後にした。





珍しい三成を見れて幸村は微笑む。
饅頭を気に入ってくれればいいけど、とこれからの時間をどう過ごすか考えながら、三成を眠気に誘ったこの陽気な空を見上げた。




















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