昼休憩、香穂子と志水は森の広場にいた。 昼食を済ませた二人は芝生の上で他愛もない話をしている。 ポカポカとした日光の光り。 頬に当たる風がとても心地よかった。 香穂子の横で志水は横になりいつもながら眠そうな顔をしていた。 「今日は寝ないの?」 いつもなら寝てるのにとクスクスと香穂子は笑う。 勿体ないから寝ないのだと志水が言えば不思議そうな顔をした。 「キレイなんです。」 「えっ、何が?」 「香穂先輩の髪がキレイなんです。」 だから寝るの勿体なくてと言い、腕を髪まで延ばし触ろうとしたが届かなかった。 宙に浮いている手がワシワシと髪を掴もうとするがあと少しのところで届かないのがもどかしい。 それを見兼ねてか香穂子は髪が手に届くくらいまで顔を少し下げた。 「ほら、キレイでしょう?」 香穂子の長い髪を軽く手に取りパラパラパラっと指の間から落ちていった。 何回も手に取っては落とし、手に取っては落としと繰り返す。 「自分の髪だからよくわからないよ。」 「そうなんですか?」 「うん。」 志水は勿体ないなと小さく呟きながら一向に手を止めようとしなかった。 香穂子もそれを嫌がる訳でもなくむしろ嬉しそうにしていた。 「キラキラしているんです。」 「キラキラ?」 「太陽の光に当たって先輩の髪がキラキラ光ってるんです。」 キレイだという言葉を何度も言われ香穂子は顔を真っ赤に染めた。 そんな香穂子を知ってか知らぬか顔が赤いですよと下から覗き込んでくる。 ただ普通に心配しているであろう志水。 香穂子は誰の所為だと思いながらも何でもないと答えた。 「私から見たら志水君の方がキラキラしてるよ。」 「そうなんですか?」 「うん、いつもキラキラしてる。」 「先輩もいつもキラキラですよ。」 ニッコリとあどけない顔で志水は笑った。 それを見て香穂子の顔は益々赤くなった。 「ほんとに志水君には適わないなぁ。」 「何がですか?」 「えっ?あっ、何でもないよ。」 つい口に出してしまったらしい言葉に志水は首を傾げていた。 気にしないでいいからと香穂子は言う。 そうですか、と志水も気にしないことにした。 「先輩、ここで眠りませんか?」 大きな欠伸をひとつしながらゆっくりと瞼を閉じていった。 いきなりのことで香穂子も驚いている。 時計を見ればあと数分で午後からの授業が始まろうとする予鈴がなる時間だった。 「えっ?志水君、午後からの授業は?」 「大丈夫‥‥‥だと思います。」 「えっ!?大丈夫って‥‥‥。」 「だから‥‥‥先輩も寝ましょう?」 何が大丈夫なのか聞きたかったが志水の言いたいことが少しわかる気がした。 既に眠っている志水の顔を見ながら仕方がないと思いながら、でも嬉しそうに微笑んだ。 ゴロンと香穂子も横になり空を見上げる。 「こんな天気の良い日だもんね。」 ちょっとくらいなら、とゆっくり瞼を閉じて小さな欠伸をした。 遠くでは授業の始まる鐘の音が聞こえてくる。 キラキラと太陽の光を浴びながらいつのまにか二人は手を繋いでいるのだった。 |