戦国

□溶ける熱
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暑い。
そう木陰の中で呟く。
気持ちの良いくらい青い空、三成は木に保たれかかりながらぼんやりと眺めていた。



























太陽の日差しが痛いくらい照りつける。
蝉の声が頭に響くくらい鳴いている。
暑い。
額から流れ落ちる汗で地面へ染みを作りながら三成は空を見上げた。
今頃、俺を探しているかもしれない。
白い大きい雲を眺めながら、三成を探しているだろう人物を思い描いた。
本当ならば今の時間、三成は自室にいなければならない。
三成を訪ねて来る者がいるのだ。
それ故、自室にて人を待たなければならなかった。
だがその約束の時間は当に過ぎている。
では何故こんな暑い中、外にいるのか。
それはただ三成が試してみたかっただけ。
強く、優しく、愛しく想うあいつは俺を見つけることが出来るのか。
否、きっと見つけるだろう。
きっと至る所を捜し回って最後には必ず見つける。
疲れた、嫌な顔一つとせず、笑いながら目の前に現われるのだ。
安易に想像できるのに‥‥‥。
なんて意地悪なんだ、と三成は小さく笑った。
それにしても暑い、と目をゆっくりと閉じる。
早く迎えに来て欲しい、そしてその声を聞かせて欲しい、そう思いながら視界を暗闇にした。
生温い風が頬を掠めていく。
さっきよりも蝉の声が耳に残る。
暑い。
汗が額から地面へと流れ落ちる。


「‥‥‥幸村。」


その姿を思い浮かべながら、三成の意識は遠退いていった。





かさり、という音がした。
目は閉じたまま意識だけ覚醒する。
スッ、と目の前に影が出来たのがわかった。
そして優しく前髪を掬われた。


「三成殿。」


静かに名を呼ばれる。
それを待っていたかのように三成は目を開き、待ち望んだ人物の顔を視界一杯に取り込んだ。


「幸村。」
「はい。」
「‥‥‥遅い。」
「はい、申し訳ありません。」


三成自身がこんな場所へ来ておいて、業々探させるような事をしておいて。
なんと自分勝手なのだ、とはっと笑った。
それでも幸村は三成の思っていた通り、嫌な顔一つとせず笑って目の前にいる。
そんなのだから意地悪したくなるのだ、と言葉にはせず心の中で呟いた。
幸村の腕を掴み強く引っ張る。
どさり、と幸村の体が三成の体へと重なった。
この太陽の暑さで出来た幸村の汗が三成へと伝い落ちる。
それが三成のと混ざり地面へと落ちた。
熱い。
この気温での暑さではなく幸村の体温が熱いと感じた。
煩わしかった気温。
だがこの熱さは心地よく、溶けてしまいそうだ。


「幸村、このまま俺と一緒に‥‥‥。」


一つにならないか、そう言おうとして止めた。
熱に浮かされ、酔っている脳だ。
何を言っても戯言に過ぎぬ。
馬鹿げている、と思い、止めた。
それよりも今はこの腕の中にある熱に溺れ、酔い、溶けてしまおう。
何もかも一緒に。





熱い。
そう呟き、三成は腕の力を込め、互いの体をより近付けた。












*thenks for みむろさん





















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