乙女

□雪の日
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「見て、見て。すごく真っ白だよ。」


一面真っ白の雪の中、望美は嬉しそうにはしゃいでいる。
まだ誰も踏んでいないない新雪の上でくるくると二人の足跡が残っていく。


「ほら姫君、寒いから、こっちへおいで。」


ヒノエは手を差し伸べて遠く離れていく望美を呼ぶけど大丈夫と言い一人、雪の上で踊り楽しんでいる。
やれやれと小さくため息を吐いたヒノエはギュッと雪を踏む音をたてながら一定の距離を保ち望美の後を歩いた。





それにしてもよく降ったものだ、とヒノエは立ち止まり周りの木々に目をやる。
竹なんかは雪の重みで撓う。
辺りは静寂に包まれていてたまに遠くからドサリと音が聞こえてくるだけだった。
吐く息がいつもに増して白く輝いている気がした。
ヒノエは望美に目を戻すとかなりの距離が離れていることに気付く。
その距離で自分がどれだけ立ち止まっていたのかを知った。
ふと急に居たたまれなくなりそれと同時に空からはハラハラと雪が降ってきた。


「望美っ!」


ヒノエは走りだし背後から抱きついた。
ギュッと抱き締める腕に力が入る。
望美は突然のヒノエの行動に驚きながらもどこか違う雰囲気なのに気付き、どうしたのと優しい声で言った。


「‥‥‥なんでもないさ。」
「そう?」
「そう、オレの神子姫様が一人でフラフラどこかへ行かないようにしようと思っただけだよ。」


望美の長く綺麗な髪に顔を埋める。
冷たい、けれど望美から微かに香ってくる香に安堵した。


「ねぇ、ヒノエ君。」
「ん?」
「こうしてると‥‥‥あったかいね。」


自然と望美を抱いている腕に力が込められる。
それに答えるかのように望美の手がヒノエの手に重なった。





いつかお前は美しい羽衣を纏って天へと帰る。





でもその時はまたこうやって捕まえてみせる。





ただ‥‥‥今はこのまま‥‥‥。




















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