戦国

□おちる
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俺が縁側にて銃の手入れをしていたら、幸村が通りかかった。
あっちも俺の存在に気付いたみたいで、ぺこりと頭を下げる。
俺はちょいちょいと手招きをし、幸村を呼んだ。



























勢が出ますね、と言いながら幸村は俺の前まで近寄ってくる。
まあな、と動かしていた手を止めた。


「やはり槍と比べ、手入れが難しそうですね。」
「そうでもないさ。慣れればなんてことない。」


もう習慣付いたものだ。
カチャカチャと音を鳴らしながら再び手入れを再開する。
そんな俺の様子を、幸村は物珍しそうに見ていた。


「銃は使ったことあるのか?」
「いえ。触れたことは‥‥‥あります。」


手は動かしたまま、顔を上げもせず、頭の中に疑問が生まれる。
暫し考えて、俺は不躾な事を言ってしまった、と後悔をした。


「悪かったな、変なことを聞いて。」


幸村にとって鉄砲とはあまり良い記憶がないだろう。
知っていたのにな。
ちらりと幸村を見れば、予想通り。
辛そうな顔をしていた。
居た堪れなくなり、早く終わらせてしまおうと俺は手を動かした。





「触ってもいいですか?」


全ての作業を終え、片付けも済ませた。
俺の横には綺麗になった愛用の銃、目の前には幸村。
幸村から触りたいと言ってくるとは思っていなかった。
だが火薬も入っていない。
不慣れが者が触っても大丈夫だろうと考え、それを了承した。


「結構、重たいですね。」


手にした時の第一声。
感心したような声を挙げながらマジマジと銃を回しながら見ていた。
そんな幸村を俺は見る。
幸村の過去を考えたら大丈夫なのか、と思っていたがそんな心配はいらないみたいだった。


「構えてみたらどうだ?」


珍しいものを見つけた子供のように目を輝かせながら触ったりしてくれるのは、見ていて微笑ましいが。
そう言われるとは思っていなかったのか幸村は驚きを隠せないでいるようだった。


「私には無理です。」


出来ません、と首を横に振る幸村だが、俺も引き下がらない。
こう、否定されたら見たくなるっていうのが心情ってもんだ。
教えてやるから、と言ってなんとか幸村を説得し、俺は腰をあげ、簡単だが一通り教えた。


「なかなか様になってるじゃないか。」
「そ、そうでしょうか?」


そう答えながらも幸村も俺に誉められ万更じゃない感じだ。
照れながらも向きを変えては教えた通りの構えをする。
やはり幸村は見ていて微笑ましいな、と思いながら俺は再び縁側へと腰かけた。
気の済むまで触らせてやろう、と俺は空を見上げる。
なんとも気持ちの良い天気だ。


「孫市殿はこれでいつも戦うのですね。」
「あぁ、そいつで相手をズドンとね。」
「やはり恐ろしい武器です。」


今流れている穏やかな空気とは打って変わって、なんとも恐ろしい会話をする。
空に向けていた顔を幸村に向ければ、幸村も俺を見ていたらしく目が合った。
どきん、と胸が大きく動く。
幸村はその事にまるで気付いたかのように、艶めかしく笑う。
そして手に持っている銃を俺の方に向け、構えた。
冷や汗が流れる。
火薬が入っていないとわかっていても、さすがの俺も恐かった。
ゆっくりと引き金の指に力を入れていく。
カチャリと音が鳴った所で俺は情けなくも目を瞑ってしまった。


「ズドン。」


幸村の声が頭の中に木霊する。
恐る恐る目を開けると、そこにははにかみながら幸村が待っていた。


「私の銃の腕前はどうでしょうか?」
「あぁ、最高だ。」


その瞬間、幸村はにっこりと笑った。





そして俺が幸村に墜ちた瞬間だった。



















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