「譲くん。」 後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。 誰なのかは直ぐにわかる。 どうかしましたか?と振り向けば貴方は俺に笑いながら用件を口にする。 小さい頃から恋い焦がれていた相手。 近いようで、遠い存在。 貴方の隣には兄さんがいたから。 追い付きたくて、でも追い付けない。 手を伸ばせば触れることが出来るのに、触れてはいけない、触れられないでいる。 今、貴方の傍には兄さんの姿はいない。 だから俺が貴方を守ります。 たとえ貴方の必要としている人が俺じゃなくても、俺は貴方の傍にいます。 だから、だから今だけは呼んでくれませんか? 兄さんの名前ではなく‥‥‥俺の名前を。 貴方が俺を呼ぶたびに俺は貴方を守りましょう。 貴方を傷つけるあらゆるものから盾となりましょう。 貴方の願いは俺に出来ることなら‥‥‥いえ、俺が全て叶えます。 だから今だけ願わずにはいられない。 今だけは‥‥‥俺の名前を呼んでください、先輩。 |