戦国

□桜、散る
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寒い季節が終わり暖かい季節が訪れた。
三成の目の前には淡い桃色をした花を枝という枝に溢れんばかり身につけた桜。
幸村に見せたい。
そう思ったと同時に幸村の喜ぶ顔が思い描かれた。



























「見事な桜でございますね。」


幸村を急ぎ呼び出し予想通りの反応に三成の顔が綻んだ。
一歩前で立っている幸村は後ろへ倒れてしまうのではないかというくらい桜を見上げている。
三成も一緒にこの素晴らしい桜を見上げた。
何度見ても美しいと感じてしまう。
だが桜を見ながらも三成の意識は幸村へと向いている。
気になって、だがその事がばれたくない為、幸村を少し見ては桜を見てまた見ては元に戻して、と交互に幾度も目を泳がせた。
そのうち振り返った幸村と目が合い瞬時に三成は目を反らしてしまった。
俺は何をやっているんだ、心の中でため息をする。
それでもやはり気になる三成はゆっくりと目線を戻すとまた幸村と目が合った。


「桜、綺麗ですね。」


穏やかな声で微笑みながら言った。
その笑顔に捕われながら心の中で、お前の方が綺麗だ、と呟く。
そしてやっぱり自分らしくないなと笑みが零れた。
このままらしくないことをしようか、そう考え一歩ずつ足を動かし幸村との距離を縮める。
再び桜へ顔を向けている幸村の背後に立ち三成はそのまま抱きしめた。
突然の行動に幸村は驚きを隠せないでいる。


「好きだ。」


肩に顔を埋めるような格好で呟くような声。
幸村に聞こえただろうか。
聞こえてないならそれでもいい、と思いながらも三成は自分のしていることに恥ずかしさと後悔に襲われる。
だが腕の中の幸村は笑っているのか肩が上下に揺れていた。


「三成殿に先に言われてしまいました。」


私が言おうと思っていたのに、と三成の腕に幸村は自分の手を重ねた。
三成は驚きながらもそのギュっと腕に力を込める。
擦り寄せながら幸村に顔を埋めた。
本当に俺らしくもない。
好きだ、愛しい。
口に出したりはしないが心の中で嫌と言うほど繰り返しながら抱き締めた。




舞い落ちてくる桜の花びらはどこか祝福している様にも感じた。




















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