綻ぶ桜

□変わらないよ
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御手洗が目を覚まして、あげた第一声は問いだった


「君達は…誰ですか?」
「あ…兄貴、俺らのこと…」
『忘れちまったんですか?』
『そんな…』
「僕の名前は何でしょうか…」


涙を流す火讐達に御手洗は、残酷な質問をする

涙を流しながら、隣にいた茶越が教えた


「お前は、御手洗団吾って言うんだよ。俺は、茶越樽人……ホントに覚えてないのかよ」
「…ごめんなさい。樽人君」
「……お前は俺のこと、茶越君って呼んでたんだ」
「茶越君?」
「そう、で、アイツが火讐」
「火讐君、君は僕と仲が良かったのかなぁ」


火讐に笑いかける御手洗は、御手洗なのに…どこか違う


「兄貴、失礼します」
『俺も…』
『失礼します…』


涙を流しながら、みんな出て行った。茶越も、明日また来るからね、と言って足早に病室を出て行った


病室に居るのは、俺と御手洗だけ


「君の名前は?」
「紋武 乱だ」
「……記憶を無くす前の僕は…幸せ者だったんだね」
「まぁな」
「記憶…無くしちゃってスミマセン…」
「アンタを守れなかった俺の責任だ。アンタは謝んなくて良い」
「でも、みんな僕より前の僕を望んでる」


寂しそうに目を伏せて、御手洗は布団をギュッと握った



「俺が助けるから」



そう言って、御手洗にキスをした



「ん…んっ、んん…」


息苦しいのか、眉を顰めて涙目になって俺の胸を力無く叩いた


「…じゃあな」



扉を閉めて、直ぐに扉に背を預けてしゃがみ込んだ



キスすると、いつも胸を力無く叩く



記憶が無くなっても…お前はお前なんだな…



なんで、あの時守れなかったんだ!


なんで、あの時喧嘩が嫌いなお前を巻き込んじまったんだ!



涙が学ランに染み込んでいくのを暫く見て、病院を出た






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