綻ぶ桜
□闇夜
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昔の夢を見た
金木犀の木の下で、香るのは
幸せの香りじゃなくて…
血の臭い
「ッ、ゲホッ!…ぅッ!」
『顔は狙うんじゃねぇぞ!』
『分かってますよ。日下さん!』
『顔以外ならいいんすね?』
『あぁ』
胃液が腹を蹴られた勢いで、飛び出してきた
ソレが口内の傷に染み込んだ
「ゴホッ、ッ……ぃた…ヒック…グスッ…ゲホッ…」
血と胃液の混ざったものが自分の体を汚した
『うわっ、俺の服汚してんじゃねぇよ!!』
体を持ち上げられて、自分の身長の三倍以上の高さから思い切り地面に叩きつけられた
「──がッ!」
『ひ、日下さん…やりすぎじゃ…ιι』
『いくら魔堂が休みだからってιι』
『うるせぇな、コイツMだから平気だっつの』
涙で顔が歪んだけど、地面に涙を染み込ませて堪えた
声は出さない
自分の口からでるのは、ただの泣き声だから
聞きたくない
自分の声が
大嫌いだった
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