二つ目

□病的希求日記
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…獄寺君…

「十代目?!」
何で、そんな所にいらっしゃるんですか?!

ん?“そんな所”?…どこだ此処?
分かんねぇーΣでも、とにかく今は…

獄寺は不満を残しながらもツナをこっちに引き戻そうとする。
そこは、真っ暗な闇の中でま真っ白な寂しい場所でもない。
ツナが受け継いだ“大空”が広がる場所だが、どうしても獄寺はそこからツナを連れ出したかった。
「十代目。早くこっちに来てください!!」
手を伸ばす。
それは、ツナが手を掴めばすぐに繋がる距離。
なのに、ツナはその手を掴まない。
大きな瞳を悲しそうな色を浮かべて、キュッと唇を噛み締めている。

十代目に、あんな顔をさせたくねぇのに!!

獄寺はギッと眉を寄せる。

…獄寺君…

ツナはますます辛そうな顔をして獄寺を呼ぶ。
ますます訳が分からなくなる。
どうして、自分が苦しくなるとツナが苦しんで…どんどん自分も苦しくなる。
「どうすりゃ良いんだよ!!」
手を握り締めて、感情的に怒鳴り声を上げた。

ズキンっ!!

「うっ…」
急に胸が痛くなる。
刺された訳でも撃たれた訳でもない。
心が引き裂かれる様な痛み。
嫌な痛みだった。

…ごめんね…

「十代目!!謝らないでください!謝らないで…!!嫌だ…嫌だ!!十代目!十代目っ!!」
目の前のツナが空へと包まれて行く。
獄寺はツナを押さえようとするが届かない。

ポツン…

小さな温かい滴が獄寺の頬に落ちた。
「十代目…。」

もう無理だ…届かねぇ…“駄目”だ…

「十代目っ?!」
獄寺は大切な人の名前を呼んで…叫んで目を覚ます。
「ゆ、夢?…何っう夢だよ!!」

ガシ!

拳をベッドに落とす。
こんなにハッキリと嫌な夢を見たのは今まであっただろうか。
窓を見上げるとポッカリと出た月が空に穴を開けている様だった。
それは、まるで今の自分に思えた。
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