最初

□sprinkling rain
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―涙雨=悲しみの涙が化して降ると言われる雨。ほんのり少し降る雨の事。―

鮮やかに淡く優しいオレンジに染める夏の夕日の中でキラキラと雨粒を反射させて降る小さな雨。
嗚呼…また君は彼を思って泣いているんだね。
君がこの中で泣いていると思うとその姿はあまりにも儚くて美しくて…。

あの日、昼寝をしていたらポツポツと雨が降ってきて、応接室に戻ろうとしていたら、小動物の姿を見付けた。
「あれは…。」
昼寝の途中だったけど、群れてないし、別に暴れて咬み殺したい気分でもなかったからそのまま無視しても良かったんだけど…。
「ねぇ…何してるの?」
僕は小動物…沢田綱吉に声をかけてしまった。
「雲雀さん?!」
ワオ!やっぱり驚いたんだね。良い反応。
「何してるの?雨降り始めてるのに。」
「そうですね…でも…すぐ止むかもしれませんよ?空は晴れてるから。」
「ふーん…質問に答えられてないけど…まぁ、いいや…早く帰りなよ。沢田綱吉。」
「はい。」
この時僕は気付かなかった。
君が少し泣いていた事に。
君の頬が雨が当たって濡れていたのではなくて、泣いていたのだという事に…。
そして、僕は次の日から度々、屋上で何かを見つめている君を見付けたのだ。
その視線の先はグラウンド。
そこには部活動中の山本武がいた。
沢田は彼の事を追い掛けていた。
山本武が転ぶと心配した顔。
ボールを取ったり、打ったりすると嬉しそうな顔。
そして…その間に見せた悲しそうな辛そうな顔。
「その顔辞めなよ…イライラするから。」
僕は屋上にいる君を見付けては言った。
聞こえる筈などないのに…。
このイライラをどうにかしたくて。
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