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□Parents&Daughters
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その日、ヴェロッサはヴィヴィオの引き取り先の捜索の任に着いていた。

「…で、ユーノ先生辺りに引き取って貰えると非常に有り難いんですけど…どうですか?」

ヴェロッサの問いかけに対し、話の大方の整理がついたユーノは口を開く。
「なるほど。大体の話は分かりました。でも、どうして僕の所へ?」
「ああ、他にも一応何軒か当ってるんですけど、中々いい返事がもらえなくてね」
「普通の子でもそうですけど、あの子の場合だと特に難しいんですよ…」

「仕方がない、としか言い様が無いですけどね」と納得せざるを得ない理由を挙げられる。

「それに、高町一等空尉 ― なのはさんと付き合いが長いなら尚更ですよ。あの子はすっかり彼女に懐いてしまっているからね」

ユーノはわざとらしく「はぁ〜」とため息を漏らした。
「…それが本当の理由ですね?」
「あれ?バレちゃいました?こっちもその方が都合がいいんですよね」
「…分かりました。明日なのは達と話をしてみます。少し待って貰えますか?」
「ええ。いい返事をお願いしますよ」


そして次の日
いつも通りの早朝訓練の時間。

「は〜い、みんな集合〜」
なのはの掛け声でフォワード陣は整列する。

「それじゃ朝練はこれで終わり。皆、結構セカンドモードにも慣れ始めてきた感じだね」
「各自、クールダウンしたら、御飯にしよっか」
フォワード陣は「はい!」と揃って声を出し、各自ストレッチを始める。


その頃、休暇を貰ったユーノは六課の隊舎の方へ来ていた。
せっかくだからなのはの教導を見てみようかと思い訓練地へ赴く。
「うん?」

ふと気付くと遠方にトコトコと歩く小さな影を発見した。
『あぁ、あの子が例の子…ヴィヴィオかな?』
そう思いながらヴィヴィオの後方へ歩を進めた。

「ママ〜」
「あっ、ヴィヴィオ〜」
ヴィヴィオはなのは達を発見し近寄ろうとゆっくりと駆け出したその時、
「あっ…」
不意に躓き、そのまま前方に転倒したかと誰もが思った…が、
ポフッと音を立てて地面と接触する事は免れた。
そう、10m程離れていたが、ユーノは咄嗟にフローターフィールドを展開させていたのだ。

ユーノはヴィヴィオの側に寄り
「大丈夫?怪我は無い?」
「うん…」
と返すヴィヴィオを抱き上げなのは達の方へ歩き出した。

「ユーノ(君)!?こっちに来てたんだ…」
なのはとフェイトがハモり、駆けつけた。
「ヴィヴィオ!大丈夫だった!?」
「うん、へーき。このひとがたすけてくれたから」
フェイトはホッと胸を撫で下ろした。
側では「もう、フェイトちゃんは心配しすぎだよ」となのはがぼやいた。

「ユーノ君、ありがとね」
「気にしないで、なのは。それよりもこの子を受け取ってくれないかな…。
 何かさっきから降ろそうとしても離れてくれないんだ…」

たはは…と苦笑いするしかなかったユーノであった。

「なのはママ、このひとは?」
「ユーノさんって言ってママの大切なお友達なの。ほら、ヴィヴィオもいい子だから下りてね」
「わかった…」としぶしぶ離れ、なのは達の方へ向かう。
するとくるっと振り向き、
「ユーノさん、ありがとう」
笑顔でそう一言だけ。
 
「なんかスクライア司書長、お父さんみたいですね」
スバルは思った事をさらっと口にしたと同時に、フェイトは
「良かったね、ヴィヴィオ。いいパパが出来て」と破壊力抜群の爆弾を投下した。

「え、えぇ〜!?」

なのはとユーノは真っ赤になり絶叫した。そして、
「フェ、フェイトちゃん!?な、何言ってるの?別にユーノ君と私は…」
「そ、そうだよフェイト。別になのはとは付き合ってる訳じゃないし、いきなりパパって…」
見事自爆した。

フェイトはまるではやてのようにニヤッと笑う。
「ふ〜ん、そうなんだ。二人ともその気はあるってことだよね?」
「っ!?」
言うまでも無く二人の顔はさらにヒートアップした。
「これじゃ話にならないから、とりあえず場所を変えよう!」とユーノが切り出し、移動を開始した。


「……」
フォワード陣一同はポカーンと口を開け呆気にとられていた。
「ねぇ、ティア。私達…完全に忘れられてない?」
「…そうね」
スターズ分隊は若干呆れモードになっている。


ヴィヴィオをアイナさんに預け、デスクの仕事をある程度片付けたなのはは別室でユーノと例の話をしていた。

「…という訳でアコース査察官からそういう話があったんだよ」
「そうだったんだ。それで、ユーノ君はどう…答えたの?」

なのはもかなり気になっていた事を尋ねた。

「うん、その事でなのはに聞きたい事があって来たんだ」
「私に?」
「そう。今の僕の仕事の状況を考えると、僕がヴィヴィオを引き取ったとしてもあまり傍にいてあげられないし、面倒も見てあげる自信も無い。
 それに、なのはに懐いてるヴィヴィオを今、引き離すのはどうかと思ってね…」

ユーノがそこまで言うとなのはは「そっか…」と呟き、ある事を思いついた。

「あっ、でもでも事実上の後見人というか、その…親代わりにはなってもいいって事だよね?」
「まぁ、そうなる…かな?」
「だったら、ヴィヴィオの面倒は今まで通り私が見るから、ユーノ君は時間が空いた時でいいから会いに来てくれるだけでもいいんだけど」

なのはは「名案でしょ?」と言わんばかりの笑顔でユーノに尋ねた。

「確かに…それなら僕もOKかな?」
「本当!?ありがと〜ユーノ君!」
なのはは思わずユーノに抱きついて喜んでいた。
「な、なのは…」
「嫌だった?」
頬を赤く染め上目遣いでそう聞かれたら答えられない筈も無く、
「い、いや。嫌じゃないよ、むしろ嬉しかったし…」
そう言うとユーノも真っ赤になる。
「だって、ヴィヴィオのパパになるんだよ?だったらママとも仲良くしなくっちゃダメだよ?」

ユーノはこの時思った。なのはって意外と大胆なんだな…と。
「うん、そうだね」
「じゃあ、そういう事で決定だね」

話に目処が立つとなのはは「早速みんなに知らせてくるね」と言って部屋を後にした。
部屋に一人残ったユーノは
「いずれ、形だけじゃなくて本当の家族になれるといいんだけど」
と新たな決意を胸に抱いていたのはまた、別のお話。
 

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