LONG BOYSLOVE

□君のトナリ―永遠の楼閣―
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[Scene.4]
 前を向くことが出来た、僕は心からテニスに打ち込むことが出来た。手塚が何の理由もなく僕にひどいことを言うはずがないのだから。
治療をするためにドイツに行ったって、二度と会えないわけではないのだから・・。

次の日曜日は六角戦だ。改めて気持ちを引き締め、グリップを握り直してコートへ入る。正面を見据えると、そこには手塚が立っていた。僕に向かって“お前はテニスを本気でしていない!”と怒鳴った。
“ハッ”とした。それは中三の初めの頃、手塚が僕に言った言葉だった。

『何言ってるの!?本気だよ、いつも!』
『嘘をつくな。手を抜くとは相手に失礼だ。』
『何、その言い方!何様なわけ!?』
『お前こそ何だ。その物言いは!』
結局、僕たちは言い争った後、なぜかテニスで決着をつけることにしたんだよね。
『本気を出せ!』
『・・・・・・。』
僕は本当に腹が立って懇親の力をこめて手塚と試合をした。結果はねばってねばって頑張ったのに、手塚の圧勝だった。
『お前は強いのだから手を抜くな。』
『君に言われる筋合いはないと思うけど?』
『俺を落としてみろ。』
『は?何言ってるの?ムリに決まって・・!』
『落としてみろ。』
手塚はそう言ってコートから出て行った。僕はその後姿がとても印象的だった。

「・・じ先輩!!不二先輩!!」
白昼夢を見ていた。ヒラヒラと手を振る越前が訝しそうに僕のことを覗き込んでいた。
「あ・・・ごめん、越前。さぁ、やろうか。」
鮮やかな夢だった。僕は試合をするたびに、きっとこの夢を見ると思う。越前の突き刺さるような目に晒されるたびに手塚と重ねてしまうかもしれないとさえ思う。
(全く似てないのに・・。)

本当のところ、僕は前向きになったフリをしているだけかもしれない。
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