LONG BOYSLOVE

□君のトナリ―永遠の楼閣―
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「タカさんにはかなわないや・・。」
「そう?」
僕はタカさんを見つめ、あの日のことを思い出した。思い出すたびに・・あの日に意識を向けたり言葉が意味を持つたびに・・
気が狂いそうだ。
 でも、僕は誰かに聞いてほしかった。

「僕さ・・フラれたんだよね。」
息が漏れるようなかすれた声で僕は言った。タカさんは僕の言葉を無言で聞いている。
「僕・・部室で聞かされるまで、手塚のドイツ行きを聞かされてなかったんだ。・・僕が邪魔になったのかもしれない。」
僕は、言いたいことの半分も伝えられなかった。・・そんな自分が歯痒い。
「大丈夫。大丈夫だよ!」
一言・・たった一言タカさんは言った。確信に満ちた笑顔で・・・。
 その一言が僕の心を解放した。誰も言ってくれなかった言葉をタカさんは僕の心に“ストン”と落とした。
「あとさ・・・英二のこと避けてる?」
「・・・それもバレてるんだ。」
「どうして?」
僕は少し口ごもり、コートを見下ろした。リズムのある打球音が青空に響いていた。
「・・・英二は僕に優しすぎるから。英二はね、僕を甘やかすから・・・傍にいると甘えてしまうから・・・。」
(ありえないね・・。)
「甘えればいいのに。」
(そんなこと出来ないよ・・。)
「僕には甘え方がわからないんだ。」
(手塚にしか甘えたくないんだ・・・。)
「いつも通りにしていた方が不二らしいよ?」
(・・・・・・。)
「わかってるけど・・・。」
(心が追いつかないんだ。)
「みんな不二が好きだから・・・無茶をする不二は見たくないよ。」
(手塚は・・・。)
「僕もみんなが大好きだよ。」
(でも手塚は僕のこと・・・。)
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