Daily Love

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入江先輩が部活を終えて帰ってくる夕方5時頃。


話がしたいとだけ言って、

今日は私が入江先輩の家の前に行くことにした。


日焼け止めをぬる元気もないまま家を出る。


メールが来た。

10分くらい待ってほしいとのことだった。


自転車でもパンクしたのかな?

家の前で待っておこうと思って、そのまま入江先輩のマンションに向かった。


すると



「……!?」


マンションの前にあるのは、見慣れた自転車と


入江先輩とみつきさんが抱き合っている姿だった。


顔を入江先輩の胸に埋め、腕をきつくまわすみつきさん。

その肩を抱く入江先輩と、目が合ってしまう。



「っ…!」

『琴音…!』



来た道を全力で戻る。


もう帰ろう、もう帰りたい、何もかも忘れたい……。


追いかけてくる入江先輩。

足の速い入江先輩にも、この短距離なら逃げ切れるかもしれない。


約30秒の道のりは、長いようであっという間だった。






『待って!』


私の家の前で捕まった。


『逃げないで。』


肩を掴む手には、指先がぎゅっと肌に食い込みそうなくらい強い力が込められてる。


見たことのない強引さに体が強張る。

なかなか顔を見られない。



「私、入江先輩の隣にはもう居られません……。」


もう見せないと決めていた涙が

意識とは裏腹にどんどん流れ出てくる。


やっぱり好きでしょうがないから。

この人の居ない未来はなんて…想像するだけでも怖いから。




『違う…そうじゃないんだ。』


「違わないです…もうっダメ、です…入江せんぱいと一緒に居――」


『違う!』



胸を打たれたような衝撃と、


体をきつく捕らえられたような感覚。



3秒かかった。

抱き締められたって気づくのに。


真夏の太陽の下、密着した体はぐんぐん熱を上げていく。


首筋には汗が一筋、二筋。




『そんなこと…言わないで……。』



苦しいくらいに力強い腕。

骨じゃなくて、声がひび割れていた。



「いりえ、せんぱい……。」


『どうせ琴音のことだから

僕に苦労かけたくないとか思ってるんだろ。』


「だって………。」


『ばか…琴音がいない方が苦労するよ…。』



ゆっくりと腕をほどいて、しっかり私の目を見る入江先輩。


そらしたらいけないような気がして

吸い込まれるように茶色い瞳に釘付けになる。


  
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