Daily Love
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* 琴音視点 *
すれ違う人の浴衣姿はどれも綺麗で、それぞれの個性が現れてるような気がする。
自分の浴衣を改めて眺めた。
もうちょっと華やかにした方がよかったかな…。
入江先輩は可愛いって褒めてくれたけど、あんまり自信ないや。
どんどん遠くへ行ってしまう後ろ姿がこっちを向く。
慌てて人をすり抜けて来てくれた。
すると左手に、ぬくもり。
あの日勇気が出なくて取れなかった、ぬくもり。
とうとう繋いじゃった…。
思わずにやけてしまいそうな顔を必死で下に向けた。
今完全に私達、彼氏彼女に見えるのかな…。
『何か食べたいものある?』
「えっと、じゃああれ……。」
いいにおいをぷんぷん漂わせるたこやき。
2人で1パック買うことに。
遠慮したのに、入江先輩に買ってもらってしまった。
なんとか座る場所を見つけて、たこやきを頬張る。
「んーっ。」
『美味しい?』
出来立てのとろとろ感を味わいながら頷くと
また頭をなでてくれた。
入江先輩からしたら私は
妹みたいなものなのかな…?
手を繋いだのも、小さい妹を見失わないためみたいなもの…?
慰めてくれるように花火が始まる。
空に浮かび上がる光。
赤、黄、紫、青――色とりどりの幻想。
時々ケータイにその姿をおさめながら、目を奪われる。
そっと隣を見た。
盗み見るつもりが、ばっちり目が合う。
その目はふと微笑んで、また空へ。
「(綺麗な横顔……。)」