Daily Love

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『久しぶりな気がするね。』

「ふふ、そうですね。」


やっぱり入江先輩に会うと元気になれる。

入江先輩不足だったから余計だ。

夏休みの宿題のこととか、他愛のない話をしながら学校を出た。


入江先輩が向かおうとするのは、駅とは逆方向。


『公園でゆっくり話そう?…ね?』


ありえないくらい優しく微笑まれて

かぁっと赤くなる顔を隠しながらついていく。







「学校の近くにこんな公園あったんですね…。」


広くて、整備が行き届いたような公園についた。


何て花かは分からないけど、公園を囲むように咲いた花達は

いい香りを漂わせながら、公園を守ってるみたい。


樹木の葉達は風にゆれ、そよそよと音をたてる。


外にいてこんなにリラックスできたのは久しぶりだった。


ベンチに腰掛けて、自然を感じる。



『ここ、落ち着くでしょ?』


「はい、とっても。」


大好きな感覚。

頭をなでる大きなぬくもり。


気持ちよくて、いつの間にかゆっくりまぶたが降りてくる。


そういえば、頭をよくなでてくれる。


どうして…?

ネットで“頭をなでる 男性の心理”って検索したら出てくる?


心地よい沈黙が続いた。


なでている手はそのまま、私の頭を少し引き寄せる。

首をかしげる形になった。


こつん、と頭と頭が触れ合う。


『ねぇ、琴音……?』


「………?」


うんと近づかないと聞こえない

息にほんのちょっと音がのったような声が

はっきりと聞こえる。



『僕に何か、隠してるよね。』


「……………。」


やっぱり入江先輩には敵わないなぁ。

私のこと、何でも分かっちゃうんだ。



「入江先輩、わたしっ……、」


『大丈夫。いいんだよ。』


そう、二度目の涙を見られたくないことだって。

顔を見ずにそのまま頭をなで続けてくれる。


前泣いちゃったときは

急に地獄から天国に来たような感じだった。


でも今日は

電話越しに声を聞いて、

ちょっぴりお話して、

優しい笑顔を見て、

公園の自然に癒されて、

入江先輩によしよしされて、

なんだか子どもみたいだけど

少しづつ少しづつ昇っていったような気がする…。


だから、涙はハラハラと落ちるだけ。

もしかしたらだけど、

そういうところまで気を遣ってくれたのかもしれない。



結局全部聞いてもらうことになった。


  
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