Daily Love

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「(体育館裏……?)」


嫌な予感がする……。


「あの、困ってることって……。」


「あんたに困ってんの。」



…的中だ。

時が止まったような絶望感。


「あたしはみつき。奏多の幼馴染で、許婚なんだ。

奏多に女の影があるって聞いて調べたら、あんたが犯人なんだって?」


「………(許婚…。)」


ひまわりみたいな笑顔が怖い。


「あんたでしょう?奏多に付けこんでるの。

こんなにブスなのに、よくやるよね。」


みつきって人は、私の顎を強く掴んだ。

相変わらず笑顔のまま。


女の子のわりには力が強い。

痛い……。



「っ……付けこむだ、なんて……。」


「人の恋路の邪魔しないでよ!!!」


頬にくらった手のひらの一撃が、静かな体育館裏にこだまする。

お弁当の紙袋をぎゅっと握り締めた。



「奏多はあたしのなのっ……!」


突然涙を流しながら私を睨むそれは

映画や漫画でよくいるいじめっ子の目じゃない。


悲しくて、寂しくて、切なくて、もどかしくて……

そんな目。


「あたしはっ…あたしはずっとずーっと前から…奏多のこと、好きなの…!!

あんたなんかには比べ物にならないもん!!

あんたなんかより奏多にふさわしいもん…!

あんたなんかっ…より、うっ、可愛いしっ…!

あんたな、んかより奏多を……知、てるっ……

あん、た…ひっく、うっ…ぅあ……。」



涙で化粧はとれ前髪は濡れ

端整な顔がぐちゃぐちゃになっているのも気にせずに泣き始めるみつきさん。


顎を掴んでいた手を離し、両手で涙をぬぐう。

私にはどうすることもできない。


「奏多はっ…絶対渡さない!!」


「きゃっ!」


ものすごい勢いで突き飛ばされた。

痛みをこらえていると、みつきさんは校門の方へ走ってった。



「もう……なんなの………あっ!」


大事に持ってたお弁当。

地面に投げ出されてた。


「そん、な……。」


現実逃避しかできなくて、その場にうなだれる。


事前にレシピも調べて、何回も練習して、

彩り、栄養、味…全部考えて作った努力が

ほんの一瞬で水の泡になってしまった。


なにより、約束を守れなかった。


「(入江先輩に連絡しなくちゃ…。)」


ケータイ見たら、不在着信。


4時間目が終わってから30分以上過ぎていた。



  
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