Daily Love

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やあ、大丈夫?


そう言って教室の窓からひょっこりと顔を出したその人物に、

落ち着きかけていた心はまた熱を帯びた。



「い、い、いい入江先輩…!」


廊下側の席で絵里ちゃんと前後に座り、

下敷きであおいでもらいながら止血してるところだった。


女子がひそひそ話し出す。


女子「入江先輩がきたよ…!」

女子2「え、ほんとだ、近くで見るとやっぱりかっこいい……。」


アイドルを見るような目で話す女子達。

入江先輩って、もしかしなくてもモテる?




どこからの風の吹き回しだろう。

体育でこけたあの月曜日、私は入江先輩にアタックしてみることを決めた。


授業まではまだ時間がある。

鼻血もちょうど止まった。

これはいっぱいお話ができる絶好のチャンス!



『あれ、なんで僕の名前知ってるんだっけ?』


「こないだ保健室で先生が言ってたの聞いて…

あの、あのときは消毒して頂いてありがとうございました。」


『いえいえ、気にしないで。もうけがはいいの?』


ほっぺたのけがを見ようと髪を軽くどけられる。

ああ……また鼻血出ちゃったらどうしよう。


「は、はい。入江先輩は体調大丈夫なんですか?」


『うん、ありがとう。

ね、それよりキミの名前教えてよ。』


改めて自己紹介するのってなんだか恥ずかしい。

思わず声が小さくなる。


「…篠崎琴音です。」

『え?』


聞き返すその目がこちらへ近づいた。

どうして入江先輩の言動は、一回一回私の胸をきゅっと苦しくさせるんだろう。

いや、入江先輩だからなのかもしれない。


2回くらい聞き返されてやっと自己紹介ができた。

入江先輩の下の名前、奏多っていうらしい。

素敵な名前だな…。


そのとき、絵里ちゃんがくすくすと笑っているのに気がついた。


なんでもないよ、って笑いながら言う絵里ちゃん。


絵里ちゃんを入江先輩に紹介した。

入江先輩は、優しく笑ってくれた。




  
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