Daily Love

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行ってみると、他の一年生は経験者ばっかりでかなり肩が狭かった。


みんなはコートでレシーブの練習。

私は見学だそうな。



「(私だけ見てるだなんて…恥ずかしいよぅ……。)」


落ち着けなくて、少しでも存在を消そうとフェンスに背中をへばりつけた。

すると、



『ね、キミどうしたの?』


後ろからやわらかな声。

その主を振り返る。

フェンス越しにこちらを心配そうに見つめる、大きな目に丸メガネをかけた人。


『キミ、新一年生だよね?』

「え、あ、はい…。」




かっこいい…!

かっこいいよ絵里ちゃん…!!


羊を連想させるふわふわの髪に、優しい顔つき。

ずっとCDで聞いていたいような心地よい声の響き。


モロタイプのその人に、思わず見入ってしまいそうになった。


『テニスは初心者?』

声を出す余裕もなくてうんうんと頷くと

その人はにっこり笑ってこちらのコートまでやってきた。


ラケットの握り方とかフォームを教えてもらえることになった。


何もすることがなくてただ見てることしかできなかった私には救いだ。

でも、ちょっとしか頭に入らなかった。

だってあんまりにもかっこよくて……。



「あの、ありがとうございました。」

『どういたしまして。じゃ、僕はこれで。』


凛とした後ろ姿をじっと見つめる。

人は恋に落ちた瞬間、なんとかホルモンっていう脳内物質が分泌されるってテレビでやってたけど

今の私は、身体中それに支配されてると思う。



恋の幕は、何も知らずに上がった。



continue..
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