Daily Love
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暗くなった空。
数えきれないほどの屋台。
氷をすりおろす音や、あちこちからの人の声。
いろんな浴衣が歩いてるけど一番可愛いのは琴音。
浴衣姿もそうだけど、うなじが見えるのはなかなかレア。
それにしてもなんて人混みだ。
家族連れ、友達同士、
そして手を繋ぐカップル。
僕達もカップルに見られているだろうな。
手は繋いでないけど。
『何か食べたいものある?……あれ。』
さっきまで隣を歩いていた琴音が見当たらない。
後ろを見ると、居た。
人を挟んで3メートルくらい先に。
あたふたしながら人混みと闘う姿は、あのときと同じ。
初めて一緒に帰った日。
下足室から出ようとしてた、あのとき。
手を取れなかった、あのとき。
今度こそ…―――
人をすり抜けて琴音の方へ。
『ちょっとヒヤヒヤしたよ。』
「すみま、……。」
途切れた言葉。
小さな手を取ったから。
やっと繋げた。
下を向いてしまったその顔を
見せてはくれないかな。