Daily Love
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* 入江視点 *
やたらと豪華な夕飯。
琴音の作ってくれたお弁当には勝てないけど。
「指輪はシンプルでいいんだ。
でもね、結婚式の誓いのキスは甘くて熱くてながーいの!」
とんでもない幼馴染を持ったもんだ。
この発言に喜んでる母さんにも、もう怒る気すらなくなった。
『ごちそうさま。みつき、ゆっくりしていってね。
よかったら後で僕の部屋に来てよ。』
「ほ、ほんとに?すぐ行くね!」
演技にまんまと騙されるバカな幼馴染。
さ、後が楽しみだ。
「奏多、入るよー。」
『どうぞ。』
僕の部屋で2人になるのは幼い頃以来。
それを意識するようにこちらを見る上目遣い。
心の中で笑ってやった。
「ねえねえどうしたの?いきなり部屋に来いだなんて…。」
僕の肩を揺さぶるみつき。
声はいつもより高め。
母さんの香水のにおい。
『みつき…僕、今困ってるんだ。』
「えっ、何かあったの?
私、奏多の相談なら何でも聞いちゃうよ。」
『あんたに困ってんの。』
こういうとき僕は本当に性格が悪い。
さあ、ズタズタになれ。
『あんたでしょう?琴音を突き飛ばしたの。
こんなにブスなのに、よくやるよね。』
みつきが琴音に言ったこと。
そっくり返してやる。
満面の笑みで。
「っ……!
あたしは、奏多を誰にも取られたくないの!」
『いつからキミのものになった?
僕がキミを好きになることはない。断じて、ね。』
そんなの分からない、と泣き出すみつき。
『そうだね、心に決めた人が居なければね。』
言葉の針…もっともっと刺され。
「あたしは奏多を心に決めたのっ…!」
『だからって琴音をあんな目に遭わせるのはいかがなものかな。
……二度と彼女の前に現れるな。』
最後に思いっきり睨んであげる。
はい、とどめ。
びくんと震える肩。
どくんと絶望する心臓の音が聞こえるかのよう。
「かな……た…………。
っ、……なんで私の気持ち分かってくれないの…?
こんなに好きで好きで…好きで好きで好きで好きでたまらないのに……
誰よりも奏多を愛してる自信があるのに……
どうしてっ、あの子なの……?」
『琴音は唯一心を預けられる存在でね。
付き合いの古いキミよりもずっと僕のことを分かってくれてる。
あんな子、二度も出会えるとは思えない…。
それに、キミより琴音の方がタイプなんだ。
琴音の方が何千倍も可愛ければ、性格も僕好みだし、
もう琴音以外考えられない。
みつきは何を言おうが恋愛対象にすら入らない。
ただ幼なじみってだけ。』
「…奏多のバカ!」
みつきは部屋を飛び出していった。
琴音を泣かせた罪は重い。