Iolite
□●第四章 理由●
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自分を対象にした賭けの配当が飛び交う中、ビルボは緊張した面持ちでぎこちなく手綱を握っていた。
彼は乗馬が得意ではなく…その上、彼は馬の毛が苦手でくしゃみが止まらなくなる。
体中に力を入れ…なるべく馬の毛を吸い込まないように辺りを見ていた。
「声がするな…」
ボフールの呟きに一行が何事かと耳を澄ますと確かに誰かを呼ぶ声がする。
「ビルボって言ってないか?」とグローイン。
その脇でオインが補聴器を耳に当てている。
馬の足を止めた彼らに、やがて可哀想なほど息を切らしたロバにひかれ、荷台が近付いてきた。
「ホッジスさんじゃないか」
ぎこちなく後ろを振り返っていたビルボが驚きの声を上げる。
怪訝そうなドワーフ達の視線を意に介す様子もなく、ホッジスはロバの足を止めると荷台を振り返った。