Iolite
□●第二章 手●
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視力が悪いというわけではないのだが、夜目が効かないのだ。
そのため、小さな石やちょっとした段差によくつまずく。
その足下は不安のためか幾分おぼつかない…例え住み慣れ、行き来し慣れているバギンズ邸への道でも。
「ほら…」
ふいに差し出される手。ルリはキョトンとしてそれを見下ろす。
「こうした方が安全だろ」
意味が飲み込めていない彼女の手を取るとキーリはゆっくりと歩き出した。
『え? あ…あの…え?』
ルリは大きな手に引かれる自分の手と斜め前を行く彼のがっしりとした背を交互に見つめて、戸惑った声を上げる。
しかし、彼は気にもとめず、ホビット仕様の可愛らしい家々の煙突から煙が立ち上る様を眺めながら歩き続ける。