Episode1
□◆プロローグ◆
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扉を開けたルリの顔が目の前に立つ青年の姿を認めて輝いた。
『シリウス』
おぅ…とぶっきらぼうにも取れる短い返事を返したシリウスは促されるままに数歩中へと入った。
『わざわざごめんね』
扉を閉めながら言っているのであろう恋人の呟きに彼は優しい笑みを浮かべるとほんの僅かに振り返った。
「謝られることじゃない。これは俺の我が儘だ」
ルリは嬉しさと緊張を混ぜ合わせたような表情で彼の横を通り過ぎ、さらに奥へと案内しようと…
「ルリ」
しかし呼ばれて立ち止まる。
振り返った彼女を腕に囲うと、シリウスはキスをしようと上体を屈める。
『?』
雰囲気を察し、それを受けようと彼を見上げていたルリはシリウスの動きが止まったことに目を瞬かせた。
彼の顔は確かに自分に向いている…しかし、その視線はその後方へと注がれていた。