「なんで普通に話しかけないんスか」

「あのプライド高い隊長がこんな場面見られて怒らないわけないでしょ」

「まあ確かに…」


現世で物陰に隠れてコソコソする乱菊さんを見つけて話しかけてみれば、思いっきり地面に叩きつけられ口を塞がれた。あまりに理不尽な行動に涙目になりながらも乱菊さんを睨めば、そこには人差し指を唇に当てて静かにするよう促す乱菊さんの顔があった。俺がそれに頷くとのし掛かっていた体を退け、先ほどまで乱菊さんが視線を投げていた箇所を指差した。そこには背の低い男女(というか最早子どもの姉弟)が並んで歩く姿があった。冬獅郎の方は目立つ銀髪と身長で直ぐに誰か判別できたが、もう一人の少女は誰か分からなかった。乱菊さんに尋ねれば、どうやら冬獅郎の『イイ人』らしい。


「ませてんな。あんなガキのくせして」

「ナニ言ってんの。外見はアレでも中身はアンタよりずっと上よ」


それもそうか、と納得するが、如何せん外見が小学生にしか見えないからか、そういう関係にあるとは思えない。


「なんで身長伸びねえんスかね」

「さあ。なんかコツがあるなら教えてあげてよ。氷漬けにされるでしょうけど」


確かに。


「つーかあいつら何処行くつもりなんスか?現世の地形なんか分かるわけねえのに」

「下調べならあの子の方が済ましてるから、隊長は着いてくだけでいいのよ」


なるほど。完全にリードされちまってるわけだ冬獅郎は。


「で、乱菊さんはなんでこんなコソコソ後つけてんスか」

「心配だからに決まってるじゃな〜い」


そのふざけた口調から心配しているのではなく面白がっていることが直ぐに分かった。どうやらこの人は後々このネタを冬獅郎の弱味を握ったとして使うつもりらしい。


「まあ精々頑張ってくださいよ。俺もう行くん……でえっ!?」


立ち去ろうとしたところで乱菊さんに思いきり襟首を引っ張られた。当然後ろにすっ転ぶ。


「ゲホッ…ナニすんスか乱菊さん!」

「アンタにも付き合ってもらうわよ。見つかった時に一人じゃ責任重すぎるじゃない」

「…俺もう完全に巻き込まれたっつーことッスよね」

「そういうこと」


嗚呼、やっぱり話しかけるんじゃなかった。






騒動のタネを撒き散らす人

(あれは…一護と、松本副隊長…?)





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さっきまで一護とブラついていたルキア。
 






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