Novel-ギャグマンガ日和
□旅の途中
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私は名はマーフィー。
一見ただのぬいぐるみにのように見えるかもしれないが、その実まったくの別物だ。
少しばかり一般的なぬいぐるみの定義から逸脱しているとでも言おうか……。
まず第一に、私はこうやって思考することが出来る。
ただし、言語を持たない私はその思いを伝えることは出来ない。それが少し残念だ。
そして私が他のぬいぐるみと大きく違うの点がもう一つある。
私は自分の意志で動くことが出来るのだ。
ちなみに今もぬるぬると動いている。
なぜそんなことが出来るのか?
それが実のところ私にもよく分からない。
私がギャグ漫画の世界の住人だからと言ってしまえばそれまでなのだが、まあそこは「神に祝福された特別な存在だから」ということでお茶を濁すとしよう。
ここまでの話を要約すると、意志を持ち自ら動くことが出来るマーフィーという名のぬいぐるみ、それが私なのだが、実際は何かを主張をすることもほとんどなければ活動的に動くこともない。
基本的にぐったりしている。
私は所有者の鞄にぶら下がったり、直接抱きかかえられて移動することが多いのだ。
かの有名な俳人(廃人に非ず)・松尾芭蕉が私の所有者だ。
俳聖の名に相応しい才気溢れる句を稀に読むには読むのだが、馬鹿と天才は紙一重とはよく言ったもので、彼が日々勢いに任せて生み出す俳句のほとんどは、後生に 残るはずもない、むしろ残ってはいけない駄作ばかりだ。
俳句の基本である五・七・五を忘れることもしばしばで、弟子の曽良くんの苦労と断罪は絶えることがない。
後に「奥の細道」として人々に語り継がれる東北の旅。
私たち三人は、今まさにその中心にいるというわけだ。
今日はその旅での出来事を少しお話ししようと思う。
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