*シカテマ*

□前進
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夢を見た。
サスケ君が出てきたの。
懐かしいな。

私ね、サスケ君が好きで好きで仕方ないの。
でも、何処かへ行ってしまったね。
最後に里でサスケ君と話したのはサクラだってね。

私、悔しくて仕方ない。


「今朝は変な夢見たの」

「ふーん」

私は空を眺めるように寝っ転がるシカマルに話しかけた。
シカマルはいつも人のいない木陰で一人で空を眺めている。
私は愚痴を聞いて貰いたいときは大体ここへ来る。

シカマルは優しい言葉をかけるでもなくただ聞いていてくれる。
それだけで心地よい。
好きとかそぉゆう感情ではなくて。

「サスケ君がいてね、サクラがいてね。私は二人の間に入れないの」
 
「ふーん」

「でね、やっぱり私はサスケ君が好きだって思ったの」

「サスケねぇ」

「シカマルは好きな人いるの?」

「え?」

「私、シカマルは好きよ。でも幼なじみってゆうか仲間っていうか」

「まぁ、俺もいのの事はそんな感じだな」

「じゃあさ、肝心な『好きな人』は?」

シカマルはうーんと唸ると

「わかんねーし、そぉゆう感情は面倒くせー」

と言った。


私、知ってるんだ。
シカマルって多分テマリさんが好きだと思う。
だってね、あの無表情なシカマルがテマリさんの名前を出すと一瞬だけど表情が変わるんだ。
なんだろう、穏やかな顔って言うのかな。

なんか、羨ましいなー。
あ、羨ましいって言えば。

「ねぇねぇ。マスマ先生と紅先生、つき合ってるんでしょ?」

「あ?そーみてーだな」

「いいなー。大人の恋愛って感じよねー」


良いな。早く私も大人になりたい。

「そぉだ。シカマル、キスいたことある?」

「はぁ?何言ってるんだよ?!」

「ねぇ。したことあるの?」

「ねぇよ」

「じゃあ、しようよ」

「何で?」

「別に良いじゃない!それとも何?怖いの?」

「別に怖くねーけど。好きでもない奴としても」

「さっき好きって言ったじゃない!」

「あれは幼なじみとして、だろ?」

「良いじゃないの!」

私は何か言いかけたシカマルの唇を塞いだ。


私もキスをするのは初めてだった。

どんな感じか知りたかった。



早く大人になりたかった。



「いの!何すんだよ!」

「ねぇ。しようか?」

「はぁ?」

「えっち」

「何でだよ」

シカマルは慌てて私を引き離そうとしたけど私はその手を掴んで自分の胸に押し当てた。

「ね?」

「ね、って」

手を振りほどこうとしたシカマルの力を利用して私はそのまま後ろに倒れた。



空がキレイ。



私はシカマルの首に手を回しもう一度キスをした。

さっきとは違って深く、深く。


するとシカマルの手が私の服の中に入ってきた。


シカマル、ワガママにつき合ってくれてありがとうね。

でも、ごめんね。

私を抱く腕がシカマルじゃなくてサスケ君だったら良いな、なんて思ってしまって。



+++++++++++++++



セックスをすると頭の中がそれだけになるって聞いたけど、実際そーでもねーな。
突っ込んでる時は何にも考えてなかったけど、こんなもんか。と言うのが正直な感想だった。
これが大人になるって言うことなら何て事無いな、って思った。


いのもそうだと思う。
ずっと譫言の様にサスケの名前を呼んでた。
俺もこれがいのじゃなくてあいつだったら、なんて思ったりもした。


+++++++++++++++



「遅いぞ」

私は時間に遅れて来たシカマルに言った。
シカマルはポケットに両手を入れたままゆっくりと歩いている。
まったく、今日もアホ顔だな。

「あ〜悪い、悪い」

「全然悪いと思ってないくせに。今日は資料室へ連れてってくれ。火影様には了解済みだ」

「はいはい」

「こら、面倒臭がらない!」

そんなシカマルを後目に私はそそくさと歩き出した。



木の葉の里の資料室は素晴らしいほどに整理された書類だらけだった。
私は読みたい資料を出来るだけ持って机に向かった。
シカマルは窓から外を眺めていた。
相変わらずボーっと空を見る奴だな。

シカマルはふと視線を下へ向けた。
そこには山中がいた。

「なんだ、お前。山中とつき合っているのか?」

「な?!なんでそうなるんだよ」

「だって今、熱い視線で見ていたぞ」

「そんなんじゃねーよ」

「ふーん」

「俺といのがつき合ってるわけないじゃんか。いのはサスケが好きなんだし。…でも」

「でも。なんだ?」

「いや。アンタにこんな事言っても何にもならねーし」

「そうか?少なくとも私はお前より人生経験豊富だが」


少しの沈黙があった。
まぁ。シカマルが何も言いたくないのなら無理に聞こうとは思わないし。
私は資料に目を通そうとした。

「抱いたんだ」

「はぁ?」

「いのを抱いたんだ」

驚きで私は資料をバサバサと落としてしまった。

「あ〜。何やってんだよ」

シカマルが駆け寄って資料を拾ってくれた。

「抱いたって…」

「言葉の通りだよ」

「やっぱりつき合ってたんだ」

「そうじゃねーって。いのはサスケが好きで。俺に抱かれてるときも小せー声でサスケのこと呼んでたし。まぁあれだな。俺はサスケの変わりにされたって事だな」

「でもシカマルは山中が好きで抱いたんだろ?」

「いや。それも違うな。何だ?お互い早く大人になりたいって思ったつーか」

「…大人になれたと思うか?」

「いや。正直こんなもんか、って」

ほい。とシカマルは拾い終わった資料を私に渡した。
私はその手をぎゅっと掴んだ。
シカマルは驚いた顔をしている。

「教えてやろうか」

「え?」

「好きでもない女を抱いても大人にはなれないんだよ」

「?」

「もし、お前の事が好きで仕方ない女が現れてこの事を知ったらどう思う?いい気はしないはずだ。そして悲しむ。その時お前はどうすることが出来るんだ?!」

「どうって」

「大人じゃないお前には何も出来ないだろ。ちゃんと好きな女を抱いて考えるが良いよ」


私はパッと手を離し、また資料を見た。
ちゃんと資料を読もうと思っても目頭が熱くなって読めなかった。


あぁ。
私はシカマルが好きなんだ。
だって、こんな話を聞かされて悲しい。


泣きたい。



「あのさ」

「なんだ」

「俺、いのを抱いてるとき、正直これがアンタだったらな、って一瞬思った」

「なっ」

それは山中にとっても私にとっても失礼だろ。
怒りと思える感情が芽生えた。
だけどそれと同時に少しだけ嬉しかった。

変な感情。



「だから。私じゃなく好きな女を抱けって言ってるんだ」

全くガキだ、とため息をついた。

「俺、アンタが好きだ」

はぁ?

「何を言ってるんだ?」

私は驚いて椅子から立ち上がった。
立ち上がるとシカマルが目の前に立ちふさがっていた。
気が付いてはいたがいつの間にか私よりも大きくなっている。

「だから、俺はテマリが好きだ」

「え…あの」

狼狽えているとシカマルは私を抱きしめた。
早くなる鼓動。
この動揺がシカマルに伝わってしまうのではないかと心配になってしまうほどの鼓動。

「迷惑か?」

「迷惑じゃないけど」

「けど?」

「もう、これからは誰を抱いたとか私に言うな!」

「?」

「お前の事が好きな私が悲しむぞ」

私はシカマルの体に手を回した。

そして強く抱きしめた。





私たちはまだ幼い。

少し道はずれたけど、大人へなるための前進。

ゆっくりで良いから一緒に歩いて行けたら良い、そう思う。



+++++++++++++++



「シカマル!テマリさん!ホラ!誰だと思う!?」

「おい!ナルトじゃねーか!」

「シカマル!そちらもデートですかい?」

「「そんなんじゃねーよ!!」」

「お二人さん、声がハモってるってばよ!」

「本当。顔がまっ赤よ」







*end*
2007.12.17



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