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□TAMA 10
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身も心も、あの悪魔のせいでボロボロになった私はそれを理由にバイトの休みを貰いました。
いや、本当はそれが理由ではなく…

「やっほォォォ!百万円アル!」
「これで溜まっていた家賃が払えます!」

例の迷い猫を探すためなんですけどね。
すみません、近藤さん嘘ついちゃって…でも悪魔のせいっていうのも半分ありますから!
もうあの悪魔の奴隷には二度となりません。私だって自分が可愛いんです。
そこらへんにいるドがつくエムなお姉さんにしてもらえばいいと思います。

「タマ、お前仲間アル。鳴き声でもあげて呼ぶヨロシ」
「仲間じゃないですからァァ!」

先ほど銀さんにも似たようなことを言われた。
『あれだろ、タマだから猫語もしゃべれるんだろ?』って。
猫なんだから猫語でもしゃべれって?
無理です。私は日本語しか喋れませんから。
猫語しゃべれるやつがいたら連れてきてください。

「なんだよ。タマ、ご機嫌ナナメじゃねーか」

にやにやしながら近づく銀さん。
あなた達のせいなんですけどーという目で見ても気づいてくれなかった。
銀さんの口からは朝一で飲んでいたイチゴ牛乳の匂いがぷんぷんする。

「いえ…早く探しましょう」
「あ!あ、あれか。タマ、はつじょ…」
「いやァァァ!」

何を思いついたかと思えば言ってはいけない単語を言おうとしたので、銀さんにタックルをかまして隣にあった川に突き落としました。
私は悪くないですよ。新八君と神楽ちゃんも「自業自得だ」って顔してますからね!銀さん!

「よくやったアル、タマ。それでこそ私のペットネ」

ぽん、と肩に手を置かれて親指を立てられても困る。
私ペットじゃないんですけど…居候なんですけど…あんま嬉しくないんですけど…

「いや、タマは俺のペットだコノヤロー!」
「ギャァァァ!」

がばあっと川から蘇ってきた銀さんがびしゃびしゃの体を引きずりながら私たちの方へ向かってくる。
ゾンビみたいで怖い。
がくがく震えて神楽ちゃんに掴まっていると新八君が声を張り上げてきた。

「ちょっとみなさん!ふざけてないで早く猫を探しに行きましょう!」
「あ、ご、ごめん」

いつもの2.5倍くらいやる気の新八君の目はギラギラ光っている。
依頼金が高額だとやっぱりやる気は上がるものだ。

「でもみんなで固まっても仕方ないですから、ここはバラバラに探しましょう!」
「お、おう」

そんな新八君に、若干銀さんが引いている。
私は新八君と同じく、早くこの事務所に溜まっている借金を返したいのでその意見に真剣にうなずいた。
神楽ちゃんも割りとやる気でぶんぶん傘を振りましている。
誰かにぶつかって、吹っ飛んでいたけど、見ていないことにした。

「じゃあ私はこっち…」
「タマ!あれだよな、タマは俺と行動するよな。俺と一緒じゃなきゃ動けないんだよな」

さて行くかーなんて思って動こうとしたら、急に銀さんが横へと引っ付いてきた。それはもううざったいくらいに。しかも私の二の腕をつかんでやがる。
あれですか、私への嫌がらせですか。お前二の腕ぷにぷにしてんなーって言いたいんですかコノヤロー。

「いいです、一人で大丈夫です」

銀さんの手を振り払って、とことこ一人で歩き始める。
後ろで「タマァァァ!待っ…ぎゃァァ!」とかなんか叫んでる声が聞こえたけど、きっと神楽ちゃんにやられているに違いない。
私は後ろを振り向くことなく、真っ直ぐに歩き続けた。




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