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□冷たい彼に溺愛されたい1
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並盛中学校・応接室。
中には2人の男女がいた。


「雲雀さん、できましたよ」
「そこに置いといて」

まとめ終えた資料を、とんとんと机で綺麗に揃え、雲雀さんが顎でさした場所へと置いておく。

「お茶」
「はいはい」

もう風紀委員に入って早数ヶ月。
私はいつの間にか、こんな熟年夫婦のようなやりとりにも慣れてしまっていた。

じゃんけんで負けてなってしまったこの委員会。
最初は雲雀さんや委員の人たちが怖くて泣いていだけど、
みんなと一緒に仕事をしていくうちにすっかり打ち解けてしまった。
今では雲雀さんも委員の人たちもなんともない。

「どうぞ」
「ありがとう」

そんな内に、いつの間にか、私はこの人を好きになっていた。
自分でもなんでか分からない。
見た目はいいけど、トンファーで攻撃してくる恐ろしい人なのに。なんでなんだろう。

「ねえ、雲雀さん」
「……なに」

思わず撫でたくなるようなまるい頭はちっとも動かない。

私が呼んでるんだから、その資料から目を離してこっちを見てくださいよ。

「雲雀さん、」
「……僕、忙しいんだけど」

私のいれたお茶をすすりながら、まだ目を離してくれない。

むっとして、言ってみた。
これなら、こっちを見てくれるかなって思って。

「大好き」
「ぶっ」

お茶が熱かったためか、雲雀さんは潤んだ目をぱちくりさせながら、やっと私に顔を向けた。
にやりと笑うと「なんてこと言ってるのさ」と睨まれる。

「だって、本当のことですもん」

そう言って、次はどんな反応をしてくるんだろう、と雲雀さんを見ているとプイと顔そらされた。
また資料を見始めている。

私の告白よりもそっちが大事なんですか。

「雲雀さん、」
「うるさい」

冷たくされても、慣れているから平気だ。

「好きです」
「…ああ、そう」

平気のはずなんだけど、でも、なんでか傷ついてる。
好きって言ってるんだから、こっち向いてよ。

「ひばりさーん、好きですってば」
「ふうん」

嫌だったら、いっそ、トンファーで殴って気絶させてくれればいいのに。
無視しないで、お前なんか嫌いだって言ってくれればいいのにな。

「私のこと嫌いですか?」
「…別に」

嫌いだって言ってよ。
そっちの方が楽なんだってば。


はやく


「嫌い、ですか?」

少し震える声が応接室に響く。

「…嫌いじゃない」

ぼそりと聞こえた声。
え、と思わず声に出てしまえば、また睨まれた。
でも、怖いとは思わない。

「――じゃあ、なんですか」
「…嫌いじゃないって言ってるよね」

うんざりした声で私に答える。
でも、まだ信じられなくて、また私は聞く。

「本当ですか?」

嫌いじゃないってことは、好きってとらえていいのかな?
そんな淡い期待、捨てちゃえばいいのに。期待しちゃうんだ。

「嫌いじゃないって言ってるんだけど。何度も言わせないでくれる?」

しつこすぎたのか、ついに雲雀さんが立った。
ああ、トンファーで攻撃されるのかなあって思ったら、腕をつかまれ

「うわっ」

そのまま資料がばら撒かれている机に押さえつけられる。

この状況は、予想もつかなかった。


「しつこすぎ」

――その唇、塞いじゃおうか。


ふっと笑みを浮かべた雲雀さんのその唇が、私の唇を塞いだ。





確かに恋だった

冷たい彼に溺愛されたい5題より


090503 新咲(急に書きたくなったのです。5/5はお誕生日。おめでっとう!)


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