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□恋の行方
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沖田隊長は私の部屋に突然入るなり、私を思い切り殴りつけた。頬は言葉にできなくなるぐらい痛い。つう、と口の中に血が流れる。

「う」
「ははっ、いい気味ィ」

今、沖田隊長は私に馬乗りになって、私を見下ろしている。その目は、ゾッとするぐらい怖い。光がなく、赤黒い目だ。
助けて、と唇を動かした。また、頬を殴られる。口の中いっぱいに血の味が広がる。

「うっせーなァ。殺すぞ」
「ひっ」

首に手をかけられ、思わず悲鳴が漏れる。沖田隊長は私の反応を見て「アッハハ!」狂ったように笑い始めた。

「おめーはそういう顔が一番似合うんでさァ。俺に、殴られて、貶されて、ゆがんだ顔をすればいいだ… アッハハハハハハハ!最高だなァ!」
「お、きた、隊長…なんで」

痛い頬に涙が流れた。
なんで、私にこんなことするの?私は数ある沖田隊長の部下の一人で、言うこともちゃんと聞いて、仕事もまじめにこなしてたのに…

「おめーが土方さんなんかに告白しなきゃァ、もうちょっとは手加減してたかなー。でも振られてよかったでさァ。OKなんかされたら、マジで殺しちまうところでしたぜィ」

沖田隊長は、にっこり笑った。ぞくりと背筋に悪寒がはしる。

私は、いけないと思いながらも副長を好きになってしまった。この気持ちを抑えようと必死だったが、副長に恋人ができたという噂が流れ、つい我慢できなくなって、先日告白をした。結果は、副長にあっさりと振られた。理由は簡単だ。恋愛はご法度、だからだ。
悲しくて、毎晩泣くそんな私を、沖田隊長は優しく慰めてくれた。

それなのに、なんで―――


「お前は俺のもんなのに、なんで土方のヤローなんか好きになったんでィ。馬鹿な女」
「がっ」

ぐっと、首をつかんでいた手に力が入る。

「っが、あ」
「かわいい」

沖田隊長の顔が近づき、口端についている血をべろっと舐められた。
気持ち悪い。やめて。この手を離して!

「っぐ」
「俺がお前慰めてたとき、どんな気持ちだったか知ってるかァ?」

更に手に力が入る。
もう視界はかすみ、もがく力もなくなってきた。

「なんで俺に告白しなかったんだ…俺だったら、ご法度なんて関係なくお前を愛してやるのによォ」

ああ、もう駄目だ。
そう確信した私は目を瞑った。

「もう寝ちまうんですかィ?しょうがねーな…俺も一緒に寝てやりまさァ… おやすみなせェ」


最後に感じたのは、唇に、沖田隊長の唇が重なる感触。
それは、とても暖かかった。




恋の行方





080823 新咲(こういうの大好きなんです)


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