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□理想
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※幸村が小学校低学年ぐらい。
主人公は小学校高学年〜中学生ぐらい?








公園のベンチで仲良くアイスクリームを食べている2人がいた。
一人は女の子のように可愛い男の子で、もう一人は男の子に微笑みながら話しかける少女。
2人は姉弟ではないが、少女は昔から男の子を可愛がっており、姉のように接している。
しかし、男の子は少女はもうすでに自分の女だと思い込んでいるなんとも腹黒い子なのである。




少女は男の子に質問をした。


「ねえ、精市君は大きくなったら何になりたい?」


小さい子に聞く定番の質問だ。
待っていたのは仮面ライダーやなんとかレンジャーという可愛らしい答えだったのだが、精市君はさらりとこう答えた。


「魔王」


驚きのあまりにアイスクリーム落とした。
まさかそんな恐ろしい答えが返ってくるとは思わなかったのである。



「あ、あははー。精市君は面白いなー」
「なんで?僕、変?」


変だ。魔王ってなんなんだよ。魔王って。
内心、突っ込みたい気持ちはあったが相手は子供だ。
ここは優しく接しておこうと思ったが、"将来なりたいものが魔王"を変とは思わないなんて、突っ込まずにはいられない。


「あ、あのね。精市君、魔王は怖いんだよ?みんな逃げちゃうよ?」
「お姉ちゃんも?」


きゅるんとした瞳を向けられる。まるで捨てられた子犬のようだ。
逃げるに決まってる――なんていえねーよ。こんな表情されちゃ。


「い、いや、そんなことはないよ!」
「じゃあ、ずっと僕の傍にいる?」
「ずっとはなあ…」


さすがにそれはないだろう。苦笑いで返す。
きっと大きくなったらお互い恋人なんかができて離れていくに違いない。
そう考えると少し寂しいなー。


ガシッ


突然、腕を掴まれた。精市君はその小さな手で、私の腕を強い力で掴む。
小さい子は力加減というものを知らない。


「痛いよ、精市君ー」


やんわりと手を退けようとしたが、思いのほか強く握っているため中々離そうとしない。


「精市君…?」
「魔王がだめなら、僕お姉ちゃんのお婿さんになる」
「…え」


またもや驚く答えが返ってきた。
お、お婿さんって…ずいぶんと可愛いこと言ってくれるじゃないか。


「そうだなーお姉ちゃん理想高いからなー」
「僕がんばる!」


精市君の手にあるアイスクリームが液体化し始めていた。
チョコミントの緑が小さな手に流れ、ぽとりとベンチに落ちた。
しかし、本人はぎらぎらと私を見つめているせいでまったく気づいていないようだ。


「ちょ、精市君?」
「どんな人が理想なの?」


真剣なのは伝わってくるのだが、本当に将来お婿さんになったら私の命はない。
弟のように可愛がってきた精市君に手を出すなんて、お母さんやおばさんに殺される。
なんとかして諦めさせなければ…


「そ、そうだなーまずは背は私より10センチ以上高くてー」
「10センチ以上…」


いつの間にかメモの準備をしている精市君。


「それと、かっこよくてースポーツもできてー頭がよくてー」
「うんうん」
「あと経済力…つまりお金があってね、ちょっと強引で」
「うんうん」
「さらっと愛してるとか好きとか言ってくれる人かな…」
「わかった」


どこかの少女マンガに出てくるかのような男だが、こんなに高ければ諦めてくれるだろう。
と思ったのだが、さすがは魔王が夢だった精市君。



「こんなの簡単だね」


どうやら諦めないようです。






おまけ


7年後

「どう?俺、がんばったでしょ」
「…参りました」
「愛してるよ」
「…さらっと言いますね」
「それが理想なんでしょ?」


おわれ


080721 新咲(勢いで書いちゃいました。反省or2)



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