小説・詩(kirby)

□7.邂逅 ―Gooey & Dark matter―
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邂逅 ―Gooey & Dark matter―



城の屋上からは見つからないように、急いで大きな木の陰に転がり込んだ。



上空での激しい戦いはまさに身に滲みるように伝わってくる。

時折、閃光が空を覆う闇の中から溢れ出し、次の瞬間には色を持たない怪光線がそれを突き破る。

一族が力をふるう度に、己の心の奥底にある黒いあぶくが膨らんでいっているようだ。



思い出したくもない…でも、懐かしい記憶。



その時、黒雲の一部がちぎれ、外に向かって弾け飛んだ。

しばらくそのまま雲の近くに漂っていたが、やがて何かを探すかのように、
城の周りに鬱蒼と茂る森林にふらふらと降下を始めた。

地上に近づくにつれ、それが黒雲の一部ではないことに気がついた。

向きを変えるごとに、体に比して大きな大きな目が見え隠れしている。



ひときわ重い音をたててあぶくが成長し、思考回路を蝕み始める。





―隠れなければ…あれに見つかってはいけない…―!





しかし未だ冷静な思考に反して体は思うようには動かず、
目玉はその物体から視線を逸らすことを拒否する。


どくり、どくりとあぶくが脈を打ち始める。


力が力を呼び、星の戦士と出会ったように、
等質物体は互いに引き合う運命にあるのだ。


先の戦いで取り戻した過去の記憶の断片は、残りの記憶を持っているであろうあの物体を求め、
今まで培ってきた新たな記憶は、あからさまに害となるあの物体を拒んだ。





一体、幾度このせめぎ合いに付き合わなければならないのだろうか。


心身ともに疲れ果て、半ば自棄になった彼の口元に自嘲の笑みが浮かぶ。





そしてついに、その巨大な一つ目に捕まった。





限界まで膨らんだあぶくは弾け、中の黒がどろどろと自分の存在を補完していく。


本来の色を取り戻した彼は、近づいて来る暗黒物質を感情を殺した目で見ていた。





「久しぶりだな、アビリティマターよ。それとも、今はグーイと呼んだ方が正しいか」


「…ダーク…マター…」





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