捧げ物

□ガリオンさんに29000HITキリリク
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「……はぁ…」
「なに溜め息なんて吐いてんだよ」

今俺は、レンの誘いを受け、一緒にアフターエイジを出て、辺りを探索していた。クロード以外にも生き残りを見付けるためだ。

「……俺と一緒は嫌だったってか?」
「ううん、違うよ。…やっぱり生き残りは少ないんだなって思って……」

ちょくちょくみんなでこんなことしてるんだが、一向に見つからない。……やっぱり、もう俺達しかいないのか…。

「勝手な実験のせいで、俺達はこんなに辛い思いをしてるんだ。…科学者が生きてたら、俺がぶん殴ってるのによぉ!」

そう言ってレンは、近くに落ちていた木の板を蹴った。……俺には記憶が無いから分からないが、みんなは世界がこんな風になる前の記憶がある。だから余計に辛い思いをしてるんだ…。

「……ごめん、レン…」
「な、なんでお前が謝るんだよ!?」
「…だって、みんなと俺じゃあ辛さが全然違う。みんなと一緒に生活してるのに、俺だけ楽な思いしてるじゃないか」

昔の記憶が全く無いから、今を当たり前のように生活出来る。でも、みんなは違う。……俺に記憶があれば、みんなと同じ気持ちになれるのに…。

「お前が望んで記憶を無くしたわけじゃないだろ。…それに、こんな荒れた地になる前のこの場所を知らないお前は、確実に勿体ない。俺達もお前も、プラスマイナス0で良いんだよ」
「……レン……」
「そろそろ帰ろうぜ? “アレ”が出ない内にな」

レンはそう言うと、アフターエイジへの帰路を歩いて行った。……レンの言う通り、プラスマイナス0で良い……のか?








「―――ん?」

後ろに何かの気配を感じて、俺は振り向いてみた。

「―――ッ!?」

俺が振り向いた先にいたのは、青白く光る“アレ”。よく形が見えなかった“アレ”は、俺の腹の中に直接入って来た。……な、なんか…!!

「どうした、アルフ?」
「…な、何でもない!」

先を歩いていたレンが後ろを振り向いて言うが、俺は心配かけたくなくて、すぐにレンの方を振り返って苦笑いを浮かべた。……腹の中で、動いてる………!













「……はぁ、はぁ……!!」
「どうしたのじゃ!? アルフよ!!」

晩飯の時間、俺の体に異変が起きていた。……体が熱い。体の中がむずむずする……!!

「……ご、ごめん。ちょ、っと…休む…よ……!」
「………待て、アルフ」

俺が立ち上がって部屋に戻ろうとすると、クロードが俺を呼び止めた。

「………今日、“アレ”に何かされたか?」
「…………さ、されてない。心配しなくて、良いからね……? 少し寝たら…治るから……」

俺はそう言って、今にも倒れそうな足取りで部屋に戻った。……みんなにはこれ以上、辛い思いをさせたくない。自分の事は、自分で何とかしないと……!!

……とは思うものの…

「…はぁ…はぁ……ぐぅぁ……ッ!!」

ベッドに横になってみたが、眠れるような状態じゃないし、腹の中で暴れる“アレ”のせいで、腹に激痛が走る。……今にも吐きそうだ……っ!!

「……はぁ、はぁ―――ウグッ!!!」

突然、何かが腹から込み上げてくる。俺は口に手を当てるが、それは手の隙間から漏れ出してきた。……全身から汗から吹き出して止まない……!! 嘔吐物が…変だ……ッ!!

「……うっ、ぐふぉ……!! ぐぉぇ!!!」

……俺の口から吐かれる嘔吐物は、黒いゲル状のものだった。食べ物が消化されてないとか、そんなもんじゃない。別物だ。

……俺は、あの時ちゃんとレンに本当のことを言ってれば良かったと、深く後悔しながら、暫くの間この苦痛を味わっていた。
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