捧げ物

□ユージーンさんに感謝を込めて
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(ルーツ)





「……ルーツ」
「なに?」

朝飯を食べてる最中に、右前に座っているドルクが俺を見た。……この3人暮らしも何年経ったかなぁ。

「……アレはお前の仕業だな?」
「えっ? アレって何…」
「…俺の部屋の扉…」

ドルクは少し怒った感じにそう言う。…ドルクの部屋の扉?

「………あぁ〜アレ? お前が寝てる間に彫ったんだ。良いだ―――」
「よくねぇよ!! なんだ“隊長の部屋”って!! 俺達はどこぞの軍隊か!?」
「ハッ! カッコ良く彫らせていただきました、隊長!!」

俺はピシッとドルクに敬礼して、真剣な顔でそう言った。……と言っても、一応ちゃんとした意味はあるんだけどな。

「ドルク、俺達3人でハンターズ組もうってよ」
「ハンターズ? 一々組む必要なんて無いだろ。同じ家に住んでるんだからよ」

確かにドルクの言う通り、ハンターズを組む必要なんて無い。冒険者ギルドの仕事だって、普通に3人でやって来てるんだから。……だがしかし!!!

「このままでは、なんかカッコ悪いんだよ隊長!!」
「誰が隊長だ、誰が…」
「俺が創設したハンターズが、たった3人で数々の依頼をこなしてみろ……。キャー、カッコイイ〜! サイン下さ〜い!! 俺と1日ヤって下さ〜い!! みたいな事になるはずだ!!!」
「―――待て、今一つ変な奴が混じってたぞ」

…無名の野郎3人組よりも、名のあるハンターズの方が知名度は上がりやすいはずだ。もしかしたら仕事の報酬も上がるかもしれない。

「大体、なんで俺が隊長なんだ。……つーかなんで隊長なんだ? リーダーでもボスでもキャプテンでも良いだろ」
「お前はそんなに横文字が好きなのか。だが断る! 俺は横文字が嫌いだからな。ドルクが隊長になる理由は、俺が創設者だから。お前達がただの部下だったら可哀相だからな」

ちなみにネロは副隊長で、やる気のない隊長を支える役目だ。と俺はネロを指差してそう言う。

「…俺は…別にいいぞ…」
「ネロ、どうしてお前は副隊長と言われて顔が赤くなる」

…それはお前の事が好きだからさ、隊長。と言いたいところだが、ネロが可哀相だからやめとこう。

「だから良いだろ? なっ?」
「めんどくせぇから却下。俺の部屋の扉に勝手に彫ったから却下。どうせハンターズの名前もセンスなさそうだから却下」
「待て、今一つ変な―――」
「混ざってない」

…くそ〜、なんて奴だ! どんな名前か聞く前にセンスが無いだなんて……!!

「…一応、どんな名前か聞いておこう」
「ヴァイス」
「却下」

くそっ! ちょっと期待したじゃないか!! 何がダメなんだ…

「今日も依頼するんだろうが。早く食べろよルーツ」
「分かってるよ、隊長」
「よし、行くかネロ」
「ちょ、待ってよ! 冗談だって!!」

食べ終わった皿を片付けてそそくさと出て行こうとするドルクとネロ。……こんな酷い奴らだったなんて、知らなかったよ…。
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