捧げ物
□ギルさんに16000Hitキリリク!
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(ドルク)
「はぁ〜〜っ、はっはっはっはっ!!」
全員が居間に集まっているのを見計らって、俺は盛大に高笑いした。……この日をどんなに待ち望んだ事か!!
「…………」
しかし、オズワルドを除いた皆は俺をチラ見すると、再び各々の作業を再開し始めた。
「待てぃ!! 俺がこんなに意味深な笑いしてんのに無視かゴルァ!!」
「どうせまた、美味い酒見つけたとかそんなんだろ?」
「隊長、小さい事で大はしゃぎすること多いからなぁ…」
ネロとミックが興味なさそうにそんな事言い出した。…どうせラルドもクリスも同じ事思ってんだろうな。馬鹿め!!! 今回の俺は一味違うぞ!!!
「…隊長、何があったんだ?」
唯一オズワルドだけが、俺の笑いを気にかけてくれた。…流石だオズワルド。俺の見込んだ雄なだけはある。
「……仕方ない。オズワルドにだけ教えてやるか」
俺はそう言って、オズワルドを廊下に連れ出す。
「…オズワルド、これを見ろ」
「…これは……?」
俺は手に持っていた紙をオズワルドに見せた。チケットにも似た小さな紙が6枚…。
「…“ガレール地方最高の絶景スポット 桜町リョウ”……?」
「…あぁ。ガレールの東にある町リョウは、この季節になると綺麗な桜が咲くんだ。だがな、その桜は誰でも見れるわけじゃねえ」
「……どういうことだ…?」
「そのままだと世界中から大勢やって来るだろ? そしたら桜どころじゃなくなっちまうわけだ」
……実際、一度だけ桜が見える場所を巡って争いが起きたらしいからな。
「そこで考えられたのがこれだ。リョウがこのチケットを冒険者ギルドに配って、この季節にギルドを訪れた冒険者やハンターズにランダムで渡すようになってんだ。桜が見れるのは、このチケットを持ってる奴だけってことだな」
「…つまり、俺達はそのチケットのおかげで桜を見れるのか?」
そういうことだ、とチケットの1枚をオズワルドに渡す。……さて、残りはどうしたもんかな。
「オズワルド〜、たいしたことじゃないでしょ〜?」
居間からミックがそう言ってきた。…今に見てろ? 俺の高笑いを無視したこと、後悔させてやるぜ!
「…いや、ミック。それが―――」
「そうだなぁオズワルド〜! やっぱりたいしたことねぇなぁ〜?」
チケットを見せようとしたオズワルドの手を押さえ込み、わざとらしくそう言った。
「いいですよ、隊長。そんなにわざとらしく言っても、僕達騙されないですからぁ」
「…隊長、いつもそう言ってましたから…」
ラルドとクリスもそう言って、あまり気にしていない様子。…こんな時に好奇心を出さないでどうする!!
「仕方ないなぁ。俺とオズワルド二人で行ってくるか?」
「…隊長……」
俺はオズワルドと肩を組んで玄関まで歩く。……さて、ここで恐らくネロが……
「…どこ行くんだよ?」
…ふっ、分かりやすいな。
そして俺が言葉を発し終えると同時に、全員が動き出す……
「あぁ〜、リョウまで行って桜を見に、なぁ?」
『ほんっっっとうに、すいませんでしたっ!!!』
…分かりやすいなぁ、お前ら…。
「ん〜? どうした土下座なんかしてよぉ?」
一瞬の内に俺とオズワルドの前に土下座する4人。俺はチケットをヒラヒラさせながらそう言った。
「隊長〜イジワル言わないで下さいよぉ〜!」
「僕、まだ見たことないんです! リョウの桜!!」
「もうこんな事しないから! お願い、隊長!!」
ラルド、クリス、ミックが俺に擦り寄ってそう言った。…俺の可愛い子分に、いつまでも意地悪くするのも可哀相だな。
「仕方ねぇな、ほらよ」
俺はそう言って3人にチケットを渡した。抱き着いてきたラルドとクリスの頭を撫でてやる。…ミックは早速、オズワルドと出掛ける準備をしだした。
「……ん? ネロ、いつまでそこに座ってんだよ」
「…フンッ。初めからチケットだって言ってりゃあ良かったんだよ……!」
ネロは恥ずかしそうにそっぽを向きながらも、右手を俺に向けてきた。……ったく、素直じゃねぇな…。
「ほらよ」
―――カチャン…
「……カチャン…?」
ネロは手に乗せられた物を見ながら、そう呟いた。
「出掛ける時はちゃんと鍵閉めるんだぞ?」
俺はチケットではなく家の鍵を渡し、そう言った。……素直になれないお前への罰だ。
「……………」
ネロはなんとも軽やかな動きで跪づき、何も言わずありったけの負のオーラを出し始めた。
「あぁ〜、すまん。俺が悪かったって…。泣くなよ…」
「な、泣いてねぇよ!!」
……素直じゃねぇなぁ、まったく…。