捧げ物

□岩頭岩さんに捧げます
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(セキショウ)





「……“異世界冒険チケット”…?」
「セキの友達って人から貰っただ。…いい人だったなぁ〜」

外出していたフクが変な紙を持って帰ってきた。真っ赤な紙に黒い字で、『異世界冒険!![1日フリーチケット]』と書かれた、何とも怪しい紙。……俺の友達…?

「…これ渡したの、どんな奴だ?」
「手を体の後ろに縛ってた赤い竜人だっただよ」
「いるか、こんなもん!!!」

俺はフクの言葉を聞き終わると同時に、手に持っていたチケットを破り捨てた。…サンダだ。アイツの考える事だ。どうせろくな事じゃ―――

「…あ……」
「あぁ? 別に破っても良かっただろ?」

フクが少し困った顔をして俺を見ていた。…あんな何があるか分からないようなもん、破り捨てるのが1番だ。

「…それ、破ると効果が現れるらしいだよ……」
「………え―――」





……一瞬にして、俺の周りの景色が変わった…。














「―――のわぁっ!?」

突然、俺の目の前に大柄の白い牛獣人が現れた。……というか、なんだ? この状況…。辺りを見回せば、見たこと無い家の中だ。俺はソファーに座ってて、目の前の牛獣人は手に雑誌を持ったまま俺に驚いている。

「……ん…? …あぁビックリした〜。てっきりあの野郎かと思ったぜ」

牛獣人は俺をじっくり見たかと思うと、大きく息をついてそう言った。…突然人が現れた事には驚かねぇのか…?

「…あ〜、えっと、俺は別に怪しいもんじゃなくて、だな…」

取りあえずは定番のセリフを一つ。こんな見知らぬ所で大騒ぎになったら、対処出来ねぇからな。

「いやいや、随分怪しいぞアンタ。いきなり人ん家に現れるなんて、泥棒か俺の体目当てに来る、赤犬野郎くらいだからな」
「俺を泥棒なんかと一緒にすんじゃねぇよ!! …っつーか何だよ体目当てって! いや、確かに俺は赤くて犬だけど、別にテメェの体なんて目当てじゃねぇよ!!」

牛獣人の言葉に鋭くツッコミを入れる。…初対面の俺を変態扱いするたぁ、良い度胸してんじゃねぇかよ、この牛野郎…!

「…あぁ〜、じゃあ一応アンタの言い分は聞くよ。何でいきなり現れたか言ってみ?」

……馴れ馴れしいな、この牛…

「…何だって?」
「あ、えっとだなぁ……」

なかなかの地獄耳な牛野郎に驚きながらも、俺はついさっきの出来事を説明した……。

「……異世界ねぇ〜。竜人でも精霊でもないみたいだが…」
「嘘は言ってねぇぞ!!」

牛野郎は信じられないとでも言いたそうに俺を見る。…くっそ〜、サンダの野郎め…! ちゃんと帰れんだろうなぁ……!?

「……まぁいいさ。悪い奴じゃないみたいだしな。アンタの話からすると、1日したら帰るんだろう」
「……1日…」

…1日フリーチケットと書いてあった。あれがホントの事なら無事に帰れそうだが…。

「どうせだから、帰れるまでここにいろよ。俺も暇してたしな!」
「良いのか!? ありがとよっ!!」

早速、問題であった泊まる場所を確保出来た。……異世界に泊まろう! ……なんて、なっ?

「………一つ聞いてもいいか?」
「ん? どうした?」

俺は牛野郎の手元に視線を持って行く……。

「………M、だな?」
「―――ち、違うぞ!? こ、これは、その…ひ、拾って…だな……!! 偶然、ドM専門だっただけで…」

牛野郎の手に持っていた雑誌。……世界は違っても、同じような物はあるんだなぁ。あの頃の俺が懐かしいぜぇ……。
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