僕らの世界
□僕らの世界-6-
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(オズワルド)
「………ん」
目が覚めると、俺はギルドのベッドに寝ていた。……そうか。俺はギルドマスターを助けた途端、気を失ってしまったのか。
「おはよう、オズワルド」
俺がベッドから起き上がると、既に起きていたミックが俺に言った。
「あぁ、おはようミック」
周りを見てみると、どうやら俺以外みんな起きていたようだ。部屋には俺とミックしかいなかった。
「……あ、そうだ。オズワルドに会いたがってる奴らがいるよ。今は宿屋に泊まってる」
「……俺に、会いたがってる…?」
…誰だ? ヴァイスに入ってからはそんなにいろんな人と関わってない。俺に会いたがってるなんて見当も着かないな。
「今から呼んでく―――」
「その必要はない」
いきなりミックの声を遮って誰かの声がした。……だが、どこにも姿が…。
「……不法侵入だろ」
「まぁまぁ、そんな事言わずに…」
ミックは何事も無いように声に対してそう言うと、別の声がミックの言葉に軽い調子で答えた。
そして、俺の目の前に突然二人の豹獣人が現れた。
「―――!?」
「そんな驚かないでくれ。俺はアダジオ、こっちはレントだ」
「よろしく!」
手を差し延べてくるレントと呼ばれた豹獣人。俺はとりあえずその手を握った。
「―――あっ、オズワルド起きたんだね!!」
いきなりラルドの声がした。声がした方を見るとラルドとクリス、ネロと隊長が部屋に入ってきていた。
「……ん? 誰だ、こいつら?」
隊長がアダジオとレントを見てそう呟いた。……俺が知りたいくらいだ。
「どうも、ドルク・マグワーさん。俺はレント、こっちはアダジオ。…今日はオズワルド・タナトスをこちらで預かりたくて来ました」
「……なに…?」
……俺を、預かりに来た? どういう事だ?
「どういう事だ…」
俺は握っていたレントの手を離して二人を睨みながら言った。
「……単刀直入に言おう。カイン様がお前を呼んでいる」
「―――!? …カイン……!!」
俺はその名前を聞いた途端、体が強張るのを感じた。……でもどうして…? 何故今頃あの人が……。
「……誰だ、そいつ?」
隊長がカインという名前を聞いて、俺に尋ねた。……あの人は…。
「……俺の…伯父…」
……カイン・タナトスは俺の伯父だ。父さんの兄で、いつも山篭もりをしている。六歳の頃から二年間、カイン伯父さんの所で鍛えられていたんだ。……いつも無茶な事ばかり押し付けられてたな。
「ほぅ。そんでその伯父がなんでオズワルドを呼んでるんだ?」
隊長が腕を組んでアダジオに向かって言った。
「……わからない。俺達はただ『オズワルド・タナトスを呼んでこい』としか言われてないんだ」
「…分かるだろう? 君の伯父がどんな人か。手ぶらで帰ったらどんな事されるか……!!」
レントが何かに恐れるようにそう言った。……まあその“何か”はカイン伯父さんだろうが。
レントの言う通り、あの人が手ぶらで帰ってきた使いの者に対してどんな仕打ちを考えているか…。……こっちまでびくびくしてしまう。だが……
「……すまない。俺にはこれからやらないといけないことがあるんだ。伯父さんの所にはいけない」
そうだ。俺はルーツという人を助けるために隊長達と一緒に行かなければならない。……本当にこの二人には悪いが、今は伯父さんの所には行けない。
「……それが終わったら必ず行くと伝えてくれ。そうしたら少しは罰も少なくなるだろ…」
……本当に悲しそうな顔をする二人には何を言っても駄目みたいだ。確かに俺も逆の立場ならそんな顔してたかもしれない。だが、これだけは譲れないんだ。すまない……。
「……わかった。ただ、出来るだけ早く来てくれ。出来るだけ! 早く!!」
アダジオがそう言うと部屋を出ていってしまった。レントはまだ少し状況を飲み込めていないようだったが、そのうちアダジオと同じように部屋を出ていった。……少し涙を浮かべていたような…。
「……意外に押しが弱いんだな、あの二人…」
去っていった二人を見たネロが呟いた。
「…それよりもオズワルド、これからやらないといけない事って?」
さっきの会話を聞いたミックが俺に言った。……この事は俺から言うよりも隊長から言った方がいいだろう。
俺はそう思って隊長を見た。